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「舛添はアウト」で「山尾志桜里はセーフ」…この差はどこにあったのか?~政治の世界では、ロジックより大切なものがある
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命運を分けたものはなにか

政治資金収支報告書の問題という点では同じだったのに、なぜ舛添氏は辞任を強いられ、山尾志桜里・民進党政調会長はその座に居座り続けることができたのか。その違いを、危機管理のプロが分析する。

6月21日、舛添要一東京都知事が辞職した。歴代知事の中で一、二を争う頭脳明晰さと行動力を活かして、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたリーダーシップを期待されていただけに、まさか辞任に追い込まれると予想していた人は少なかったかもしれない。

前都知事の5000万円問題のように「巨額の不明金」の疑惑があった訳でもなく、知事としての「職務権限の行使」に関する金銭の授受が指摘された訳でもない。政治資金から、家族旅行の費用を出した、寿司を食べた、書を嗜む上で必要なシルクのチャイナ服等を買った、といったような、都知事の権限の大きさに比してある意味で「小さな問題」が舛添知事の命取りになったのである。

ここ数年、政治家の「政治資金の使途の適否」をめぐる問題が相次いでいる。政治家としての権力をめぐる従来型の犯罪である「贈収賄罪」とは別の次元で、政治資金にかかわるコンプライアンスが問題となるケースだ。

最近では民進党政調会長の山尾志桜里衆議院議員のガソリン問題が記憶に新しい。いずれも、「巨額の賄賂」や「職務権限の行使」とはまったく関係なく、政治資金収支報告書に記載されている「政治資金の使い方」がおかしいのではないかと指摘され、大きな社会問題になった点が共通している。

ところが、この二つのケースは、その帰結において著しい対照を見せている。ワイドショーでの糾弾と都議会での追求をかわしきれず最終的に辞職に追い込まれた舛添知事に対して、山尾政調会長は結局、議員辞職するどころか、政調会長の座を維持し活躍を続けている。

両者の命運を分けたものは、何だろうか。

ウソのように消えた山尾バッシング

山尾政調会長のケースは、地元の秘書がガソリン代を多い時で1日に10万円も経費として計上していること等を報じた、3月31日発売の週刊誌記事が発端だ。新しく誕生した野党第一党・民進党の政調会長に山尾氏が就任したのは3月27日。

「保育園落ちた日本死ね!」という匿名ブログを国会で取り上げ、政権与党に舌鋒鋭く迫っていた若手議員筆頭として、2回生議員ながらも異例の抜擢を受けたのだ。その山尾氏に政治資金の疑惑が浮上したことの衝撃は大きかった。

本当にガソリン代がそれだけかかっていたのであればまったく問題はない。しかし、もし地元の支援者に「ガソリンスタンドのプリペイドカードを渡すから、自由に使って下さい」といって私的なガソリン代に充当させていたら、選挙区内の有権者に対する寄附行為、選挙期間中であれば買収行為にあたる可能性がある。これらはたいへんな重罪だ。

あるいは、プリペイドカードを悪用した実態のない経費の架空計上だとしたら、これまた政治資金収支報告の虚偽記載として立件され得るケースだった。

ところが、疑惑を追及する声が沸騰した後も、山尾政調会長は頑なに口を閉ざし、言質を取られるような中途半端な説明を一切しなかった。そして、6日後の記者会見で、山尾政調会長はおもむろに、ガソリン支出は、ガソリンスタンドで廃棄されている他人のレシートも利用した、秘書による不正請求だった可能性があると示唆し、法的措置を取ることも考えていると説明したのだ。

この後、山尾政調会長を糾弾する声は、嘘のように引いていき、今日に至っている。これは、危機管理のお手本のようなケースとも言える。いったい何が功を奏したのだろうか。