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綾野剛が惚れこんだ一作!「日本で一番悪い警部」が犯した、警察史上最大の不祥事とは?
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『日本で一番悪い奴ら』の原作

6月25日に公開される映画『日本で一番悪い奴ら』が注目を集めている。綾野剛演じる北海道警の諸星刑事が、拳銃を摘発するなかで、暴力団や麻薬密売人と交際するようになり、自ら覚せい剤に手を染め、ダークサイドに堕ちてしまう、という物語だ。

この映画には、原作がある。日本警察史上、最大の不祥事といわれる北海道警察「やらせ捜査事件」について、その当事者である元道警警部・稲葉圭昭氏が内実を記した『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』がそれだ。

監督の白石和彌氏、綾野剛らが惚れ込んだという本作。「銃器対策のエース」と呼ばれた男が、覚せい剤に手を染めてしまったのか。破滅を迎えた男が、九年の服役を経てすべてを告白した『恥さらし』から、その一部を特別公開する――。

人として越えてはいけない一線を超えた

「主文、被告人を懲役九年、罰金一六〇万円に処する」

2003年4月21日、覚醒剤の使用、営利目的所持、銃刀法違反の罪に問われた私、稲葉圭昭は、札幌地裁で判決を言い渡されました。被告人席に戻り、裁判長の弾劾が私の耳に響きます。

「薬物犯罪を取り締まるべき立場にあった被告が覚醒剤を自己使用したほか、密売目的で所持し、さらに拳銃を所持したという、いわば前代未聞の事案である」

「幹部警察官による前代未聞の不祥事として、国民に多大な衝撃を与えたばかりでなく、道民の北海道警察に対する信頼、ひいては国民の警察組織全体に対する信頼を著しく失墜させたものであって、その社会的影響も深刻である」

裁判所は何者かが私を銃撃する可能性も考慮したのでしょう、被告人席と傍聴席の間に防弾パネルが設置され、法廷には緊迫した空気が張り詰めていました。その一方で、私の気持ちは自分でも驚くほど平静でした。

26年間にわたる警察官人生のなかで、私は数多くの違法行為に手を染めてきました。「捜索差押許可状」(ガサ状)なしの強制捜査、犯意誘発型のおとり捜査、所有者のわからないクビなし拳銃の押収、覚醒剤と大麻の密輸、密売、そして使用。組織ぐるみで行われる違法捜査によって、私の感覚は完全に麻痺し、正と邪の区別がつかなくなってしまったのです。

そして、警察官として、いや、人として許されない一線を越えてしまった。覚醒剤の使用については、今でも消え入りたいほどの恥ずかしさを感じています。しかし、判決の日を境に、ようやく人間らしい感情を取り戻せたと思ったのも正直なところでした。