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巨大ヘッジファンドがついに導入を決めた人工知能。その実力を検証する 
金融市場で人間はもう「不要」なのか
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英国のユーロ離脱を巡る観測などから相場が激しく揺れ動いているが、そうした金融市場の背後では巨額資金を運用するヘッジファンドが市場の値動きに大きな影響を与えているとも言われる。

そして、このヘッジファンドが最近、自らの取引システムに最先端のAI(人工知能)を導入し始めている。

●"The Rise of the Artificially Intelligent Hedge Fund" WIRED, 01.25.16.

AIによる資産運用の自動化

上記記事によれば、香港に本社を置く新興ヘッジファンド「Aidyia」では、日常的な証券売買を完全にAIに任せ、そこには人間のトレーダーは全く関与していないという。また、新興業者だけでなく、「ブリッジウォーター」や「ルネッサンス・テクノロジーズ」など業界大手も「AIトレード(AIによる証券取引)」を加速している。

なかでも運用資産総額が1,700億ドル(20兆円前後)とも言われる世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター」は、有名な米IBMのAIコンピュータ「ワトソン」の技術者チームを引き抜いて、AIトレード・システムの開発に当たらせている。

ただし、ここで言う「AIトレード」は、近年話題に上ることの多い「HFT(超高速取引)」とは別物だ。HFTは、たとえば先物と現物の僅かな価格差をコンピュータが見逃さず、高速回線を経由して瞬時に大量の証券売買を繰り返すなど、いわば「統計的な鞘取り」システムに過ぎない。

これに対し、ヘッジファンドの「AIトレード」では、中・長期的な相場変動は元より、世界各国の政治・経済状況、あるいは企業業績などミクロ経済指標、さらには各国中央銀行の動向や市場センチメントなど、総合的なデータを深く分析して、投資銘柄を決定する。

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従来、この種の知的作業はヘッジファンドで働く、いわゆる「クォンツ」と呼ばれる専門家がコンピュータを駆使しながら行ってきた。しかし、彼ら人間による運用成績が近年、とみに低下してきたため、ヘッジファンドでは人手をなるべく排して、AIによる資産運用の自動化に向けて動き出したのだ。

そこで使われるAI技術は、原因と結果の因果関係を確率的に推論する「ベイジアン・ネットワーク」、無数の仮想トレーダー(コンピュータ・プログラム)の中から自然淘汰的に生き残った最強の仮想トレーダーに最終的な証券取引を任せる「遺伝的アルゴリズム」、さらには脳科学の研究成果を本格的に導入した最先端の人工知能「ディープラーニング」など多種多様である。

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