週刊現代
『チーム・バチスタ〜』の海堂尊が語る革命家チェ・ゲバラの魅力
なぜいま、ゲバラを描くのか?
〔PHOTO〕gettyimages

 なぜ、ゲバラを描いたのか

本書『ポーラースター』は、キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラを主人公とした長編4部作の1作目です。この第1部では、アルゼンチンに生まれて医学生となり、親友と南米をバイクで旅行するまでの若きゲバラが収められています。

これまで主に医療のジャンルを題材に作品を発表されてきましたが、今回、あえてゲバラをテーマに選んだ理由は何でしょうか。

私の場合、この作品に限らず、なんとなく書きたいと思って書き始めるケースがほとんどで、そこに強い意志があるわけではありません。だから、その質問に答えることがじつは一番難渋したりするわけです(笑)。

きっかけは'11年にNHKBSの『旅のチカラ』という番組でキューバを訪れたことでした。番組スタッフからの依頼で滞在中に短編を執筆したんです。

以前からぼんやりと考えていたんですが、そのときに「いつか連作短編でキューバ革命を書きたい」と思うようになったのです。そして昨夏、これまで書き続けてきたシリーズがひと段落したので本シリーズの執筆を始めました。

第1部のゲバラ青春編に始まり、今後刊行予定となる第2部中米放浪編、第3部カストロ立志編、そして、第4部の革命編と物語の筋はおおむね史実に沿って進められていきますが、その中身はとてもフィクション性に富んだ作品に仕上がっています。

はい。史実に忠実なゲバラの評伝は、三好徹先生や戸井十月先生が完成度の高い作品をすでに書かれていますので、その上に何か新しいものを乗せる自信はなかった。「自由にやるしか僕の生きる道はない」と考えました。

最初は、主人公の名前もゲバラではなく、「ロザリオ」にしていました。「ゲバラ」という名前に縛られるのが嫌だったから。でも、キューバ革命に「ロザリオ」として登場するとどうしても違和感がある。ペルーのリマで初稿のゲラを読んだときにそれに気づき、キューバ革命すらまったくの創作になると座標軸をなくしてしまうと思い、慌ててゲバラに変更しました。

逆に言うと、先に物語を立ち上げて、骨格をつくったからこそ、ゲバラに戻すことができたのかもしれません。