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歌舞伎を支える「襲名」ビジネスと残酷な「世代間格差」
雀右衛門・芝翫の襲名に思う「谷間の世代」の悲哀
2013年4月に新開場した歌舞伎座。それから3年が過ぎて……〔photo〕gettyimages

歌舞伎座が新開場して丸3年が過ぎた。「こけら落とし」ブームは終わり、空席が目立つようになっている。

松竹はテコ入れのために昨年は中村鴈治郎、今年は中村雀右衛門と中村芝翫と大名跡の襲名披露公演を連続して打っているが、いまひとつ盛り上がらない。むしろ、市川海老蔵や尾上菊之助の、それぞれ2歳の長男の「初お目見得」のほうが話題になる。

歌舞伎界で進む世代交代のなかで、ひとつの「格差」が生じている。それは先代から続く格差でもあった……。

文/中川右介

襲名披露公演での「格差」

松竹(歌舞伎)は襲名で儲け、宝塚は卒業で儲ける、と言われる。

たしかに、歌舞伎では毎年のように誰かが襲名し、宝塚も誰かが卒業し、そのたびに特別の興行をしている。本来、「特別」だったはずのものが、いまや恒常化していると言ってもいい。

今年、2016年は2人の役者が大きな名跡を襲名する。

中村芝雀(1955~)が五代目中村雀右衛門を、中村橋之助(1965~)が八代目中村芝翫を襲名するのだ。

すでに雀右衛門の襲名披露興行は歌舞伎座で3月に行われ、6月は福岡の博多座、7月は大阪松竹座だ。もうひとりの芝翫の襲名披露興行は10月と11月に歌舞伎座で行われる。

橋之助(=芝翫)の場合は、息子たち3人も襲名するので父子4人同時襲名だ(長男・国生が四代目橋之助に、次男・宗生が三代目福之助に、三男・宜生が四代目歌之助になる)。いずれも、東京の歌舞伎座の後、全国各地で行われる。

襲名披露公演の月は、普段よりも料金も高い。たとえば、3月は歌舞伎座での雀右衛門襲名披露公演だったのだが、通常は一等が18,000円なのに、19,000円だった。

高くても、襲名披露公演は客が入る。人気役者が揃うのと、襲名する当人にとって重要な演目・役を演じるので、名作・有名作が上演されるからでもある。客にとって、「見たい芝居」が多いのだ。そして何よりも、襲名する役者がチケットをたくさん売るからだ。

襲名は、藝の継承とか、歌舞伎の発展のためにも必要だが、ビジネスとしてもおいしいものなのだ。