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公園で牛と闘う特訓をしていたら、日本一の空手家になっていました【最強さん、いらっしゃい!第二回】佐竹雅昭・前編

最強とはなにか――。その言葉の意味を求めて、さまよい歩くわれら「最強探偵団」。今回は、正道会館主催全日本空手道選手権で通算4度の優勝を飾り、K-1の舞台で屈強な外国人選手らと渡り合った佐竹雅昭さんのもとを訪ねた。

さたけ まさあき・65年大阪府生まれ。82年正道会館総本部道場に入門。正道会館主催全日本空手道選手権を3連覇。通算4度の優勝。90年、キックボクサーのドン中矢ニールセンにKO勝ち。翌年前田日明の主宰する総合格闘技団体のリングスに参戦。93年K―1旗揚げとともに日本人エースとして大活躍。その後はPRIDEにも参戦。90年代の格闘技ブームの立役者である

ハリウッドスターになりたくて

──「最強の男に学ぶ」第2回目は、90年代格闘技ブームの立役者といっていい、佐竹雅昭さんにお話を伺います。
佐竹 押忍! よろしくお願いします!

──これは最強を極めた男に、その道がいかに険しく、しかし、醍醐味に溢れているかということを伝える企画でして。
佐竹 いいですねえ。僕はいま、京都で経営者を集めて「平成武師道」という人間活動学を主宰しているんですけど、まさに人生の醍醐味を多くの人に伝えたいという気持ちが強くわいているんですよ。

──いろんな経験をされてますからね。佐竹さんは日本人では稀少なヘビー級。最強とはなにかを最も意識する階級かと思うんですが。
佐竹 やっぱりこの大きな体を与えてくれた両親に感謝ですよね。生まれ持ったという意味では本当にね。子供の頃から大きかったですから。

──ということは、少年時代から格闘技の世界に。
佐竹 実は、そうでもなくてね。最初は少年野球をやっていて。凄く弱いチームだったけどね(笑)。でも、最初はそれで満足していたわけです。だってほら、土日だけちょこっと練習行って、練習終わった後はアイスクリームもらって喜んで。

それが、ある日突然、監督が代わって超スパルタになって(笑)。火曜から日曜までびっちり練習。朝6時に集合していきなりランニング。学校が終わると、夜8時~9時まで延々と猛練習。それに、ビンタ、ケツバットは当たり前。ボール紛失したら「全体責任や!」って言われて、全員でグラウンドをうさぎ跳び。

──ひどい(笑)。
佐竹 やめたくて仕方なかったんだけど、ある日試合をすることになって、それまでずっとコールド負けばっかりだったのに、いきなりコールド勝ちしたんですよ。そしたらこっちも面白くなるでしょう。練習にも張り合いが出るし。これは平成武師道の中でも話すことなんだけど、今の人は「努力や根性ではなんとかなるなんて、嘘だろう」って醒めている人が多いわけ。

──でしょうね。
佐竹 でもそうじゃない。「努力や根性を経験した上で醒めなきゃいけない」っていうのが、このとき知った持論なんですよ。実際そうだしね。まあ、なんでも能書きだけ言っても駄目。実践してみて初めて体で知って、そこから考察に入るというのが正しい道じゃないかなと。

──そんな体育系哲学少年が、どういう経緯で格闘技に目覚めたんですか?
佐竹 小学校卒業と同時に、少年野球も卒業することにしてね。その御褒美として監督が映画連れて行ってくれて。それが凄い嬉しくて。その映画というのが『The Bad News Bears』。つまり『がんばれ!ベアーズ』だったんですよ。

──ああ、なるほど。
佐竹 それを見て、自分のチームと彼らのチームを重ねてしまった。全く同じ境遇でね。最後はヤンキースっていうチームに負けちゃうんだけど、「明日は見てろよ!」と言って終わる。もう涙ボロボロ。それで、「俺もハリウッド行ってスターになって、テイタム・オニールと結婚したい」と思った(笑)。ませてたんやねえ。

──えらい飛躍してますね(笑)。テイタム・オニールは、その後、テニスのマッケンローと結婚しますけどね。
佐竹 でも、その後離婚してね。それで今、僕はオニールとフェイスブックでつながってるという(笑)。ま、そんなことはいいとして。とにかく「ハリウッドに行きたい」という想いが募ってね。どうにかならへんかなあと思ったときに、同じ東洋人で、ハリウッドのスターになった人がいたわけですよ。

──ってことは……
佐竹 ブルース・リーだよ!

──やっぱり!
佐竹 そこで、ハリウッドに行くなら格闘技だ、と。で、少年ジャンプの『リングにかけろ』にはまって。それからは『あしたのジョー』と、あとサンデーの『柔道賛歌』とか。

──梶原文化の洗礼ですね。
佐竹 まさに梶原チルドレン! そういう作品を通して、とにかくボクサーとして絶対的な強さを持てば、ハリウッドスターとして道も開けると思ったんですよ。

──計画的にも聞こえるし、無謀にも聞こえます(苦笑)。
佐竹 そんなある日、ボクシングの本を買いに行こうと本屋さんに行ったら、書棚のある一角だけが「ピッカー」って光ってる。「これは一体なんや」と。それが、大山倍達先生の『大山カラテ もし戦わば』だったんです。本当に光っててね! 大山倍達がトラを蹴っている絵とか、黒ヒョウに飛び蹴り喰らわせてる絵とか。もう腰を抜かしてね。

牛の殺し方、ゴリラの倒し方、山籠りの効果……まあ、すべて真に受けました(笑)。それで『空手バカ一代』にどっぷりつかりましたね。ハリウッドどころか、もっと凄いところに行けるかもしれないって思ったなあ。