ドイツ エンタメ
70年ぶりに蘇ったヒトラーに共感!? 劣化する日本に通じる「不気味な恐ろしさ」の正体


文/辻田真佐憲(近現代史研究者)

「ヒトラーと一緒に笑う」恐ろしさ

映画『帰ってきたヒトラー』が、6月17日より日本で公開される。1945年に自殺したはずのヒトラーが、2014年のベルリンにタイムワープし、その卓越した話術を活かしてテレビ番組のスターになるという内容だ。

原作であるティムール・ヴェルメシュの同題小説は、2012年にドイツで発売され、同国内で250万部を超えるベストセラーとなった。映画のパンフレットによれば、現在、日本を含む世界41カ国で翻訳されているという。

かくも売れている以上、人畜無害なエンタメ作品か……といえば、さにあらず。なにせ、テレビ番組のスターになったといっても、ヒトラーはまったく「改心」していないからだ。

ヒトラーはその偏狭なイデオロギーを堅持し、世界制覇の野望を語り、ユダヤ人を憎悪している。ただ、その振る舞いがモノマネ芸人のブラックジョークと勘違いされ、民衆に受け入れられてしまったのだ。

ヒトラーは当初こそ戸惑うものの、次第にその立場を利用し、支持者を獲得していく。なるほど、安直に敵と味方をわけ、「イエスか、ノーか」を迫るその言動は滑稽ではあるものの、価値観の相対主義がはびこる現代にあって、ときに新鮮で痛快ですらある。

こうした人気を背景に、ヒトラーはついに政治の世界にも乗り出す。原作の小説は、ヒトラーが思いついたポスターのスローガンとともに、薄気味悪く終わっている。

「(引用者註、ナチ時代は)悪いことばかりじゃなかった」
歩き出すのだ。このスローガンとともに。

映画版はさらに後味が悪い。