週刊現代
『不夜城』から20年…暗黒小説の名手・馳星周が「山と神」をテーマに新境地を拓いた!
最新作『神奈備』インタビュー
〔Photo〕iStock

なぜ山に登るのか

親に愛されず、悲惨な人生を送ってきた少年・潤は、神に「自分が生まれてきた意味」を問うため、ひとり霊山・御嶽に登ります。そんな彼を追って、「強力」(登山者の荷物を運ぶ案内人)の孝も荒れる御嶽に向かう。本書『神奈備』は馳さん初の本格的山岳小説です。

山に登っていると、人智を超えた神々しい光景を見ることがあります。一方で、熊もいれば雪崩も起こる。山というのは恐怖と畏怖の対象であり、神の存在を感じる場所です。

今回は「山と神」をテーマにしようと思い、山岳信仰の対象となっている山ということで、御嶽を舞台に選びました。「御嶽教」信者の方がたくさんいるうえに、単独峰というのもよかった。

取材のために登ったのが'14年の8月。その1ヵ月後に噴火があったときは本当に驚きました。僕が登ったときはすごく天気が良くて、噴火口のすぐ近くで昼寝したんですよ。あのとき噴火していたら、とゾッとしましたね。御嶽は山頂が平べったくて逃げ場がないですから……。

軽井沢に移住して今年で10年だそうですが、登山を始めたことは移住と関係あるのでしょうか。

ええ、近所に先輩作家の唯川恵さんが住んでいて、その旦那さんが山男だったんですよ。一緒に飲む度に「馳も山やろうぜ」って誘われるわけ(笑)。最初は「冗談じゃない」と思っていました。でも、軽井沢ではいつもきれいな浅間山が見えて、6年くらい前、「下から見てこんなにきれいなんだから、上から見たらどうだろう」と思ったのが登り始めたきっかけですね。

最初は離山という標高差250m程度の山に登りました。それまで運動なんてしていなかったし、その高さの山に登るだけでも2時間近くかかって、吐きそうになった(笑)。そこでへこたれるケースもあるんでしょうけど、僕は基本的に負けず嫌いなので。

今は月に1回くらい山に登っています。50代になると体力は落ちてくる一方なので、本当はもっと登りたいんですけど、なかなか時間が取れなくて……。7月から10月の登山シーズンには、北アルプスや南アルプスに登っていますよ。