週刊現代 オリンピック 企業・経営
「下町ロケット」ならぬ「下町ボブスレー」大田区の町工場が一致団結、五輪を目指す!
マテリアル・細貝淳一社長に聞く
細貝氏(中央)と町工場の技術を集めた下町ボブスレー。'18年に行われる平昌五輪を目指す

(取材・文/夏目幸明)

モノづくりの街、東京・大田区の町工場が団結し、ボブスレーをつくって五輪で滑らせる―そんな「下町ボブスレー」プロジェクトを始めた人物がいる。アルミの高精度加工で世界的な技術を持つ町工場・マテリアル社長の細貝淳一氏(50歳)だ。彼が日本のモノづくりの未来を語った。

これが「モノづくり」スピリットだ!

団結!

大田区の町工場は、日本のモノづくりを下支えしています。東京は地価も人件費も高いため、大規模な工場は少ない。たくさんあるのは、宇宙・航空産業等で使う高精度部品や、自動車や家電の生産ラインで使う耐久性が高い部品を大手メーカーに納入する工場です。

特徴は、多くの工場が「短納期」「高精度」であること。部品づくりは、切削、塗装、検査など、様々な専門的技術を持つ企業が連携して行う場合が多い。大田区には、こうした企業が密集していて「今から持ってくから急いで削って!」「おう!」と気軽にやりとりできるから、短納期が実現できています。

また、お互いの仕事内容がわかっているから、「この部品ならこの精度が必要だよな」と互いに気配りができ、顧客企業が望む精度を実現しやすい。大田区の、さらには日本のモノづくりを下支えしているのは「団結力」と「気配り」なのかもしれません。

空洞化

大田区の問題は、日本全体の産業空洞化とともに町工場が減っていること。隣が廃業するのは、自分の工場が衰退していく兆しです。信頼関係がある工場がなくなれば、自社が受注できる案件が減ります。また、塗装や検査を遠方の企業に発注すると納期も延びます。

私が下町ボブスレー推進委員長になったのは、大田区のモノづくりの衰退を防ぐためです。このプロジェクトで町工場同士の新たな連携が始まり、見た方に「町工場はカッコイイ」と思ってもらえれば雇用の確保にも結びつくでしょう。

プロテスト

生まれも育ちも大田区です。定時制の高校に通い、「部活に入れば成績が悪くても進級できる」と聞いて野球部に入りました。体力があったのでしょう、ピッチャーなのに打率は5割。都大会で優勝すると「才能があるのではないか」と誤解して巨人やロッテの入団テストを受けました。結果は、50m走だけで不合格。プロのすごさを思い知りました。

その頃、バンドもやっていて、こちらも全国大会に進めるところまで勝ち抜きました。すると芸能事務所から「こういう音楽を書いてくれるならウチに」とお誘いが来た。でも音楽性が合わずに断ると、すぐ落選し、その後は何度挑戦してもダメでした。でも、やってよかった。

好きな言葉は「チャレンジ」。この体験で、想像を大きくふくらませ、できる限りのことをする生き方が自分の性に合っているとわかったんです。