経済・財政
パクリがあるから世界は楽しい!?
模倣とクリエイティブの切っても切れない関係

異色の書『パクリ経済』を読む
まねること、学ぶこと、創造すること…〔photo〕iStock

TEXT 池田純一

パクリと創造のあいだ

前回、イーロン・マスクがAIに関する研究成果を一般に公開していくためにOpenAIを設立したことを紹介した(「超知性」が人類を滅ぼす日は来るのかhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/48597)。

このように「オープン」は、今日、イノベーションを考える際には外せない観点となっている。その「オープン」の意義について、少しばかり絡め手から扱った異色の本が、『パクリ経済』だ。

「絡め手」というのは、ハイテクやアントレプレナーシップなどといった、マスクも属するいかにもシリコンバレーで扱われる対象ではなく、ファッションやコメディ、フードビジネスといった分野を取り上げているからだ。

同じ「創造性」といっても、イノベーションというよりもクリエイションという方がふさわしい。デザイナーやコメディアン、あるいはシェフ個人のアーティスティックな創作性の方により多くの関心が寄せられる領域だ。

『パクリ経済』というタイトルから、何かふざけた本なのでは? とイメージする人もいるかもしれないが、至って真面目な本だ。何も出版社が売れ筋を狙って適当につけたタイトルではなく、原題の“The Knockoff Economy”をそのまま訳したもの。

knockoffとは「模造品」のことを指していて、たとえば有名デザイナーの模造品はdesigner knockoffという。だから「パクリ」という表現で、完全な「複製」というわけではないニュアンスを残している。

そのあたりは副題も心得ていて、“how imitation sparks innovation”、すなわち「模倣がイノベーションを着火する方法」とある。ここでも複製ではなく模倣だ。その点で邦訳副題の「コピーはイノベーションを刺激する」というのは、「コピー」と明言することで原書よりも踏み込んだ表現になっている。

ただし「コピー」と言い切ってしまうのはいささか勇み足のようにも思える。なぜなら、この本で扱っている対象であるファッション、フードビジネス、コメディの世界は、法律用語としての「コピー/複製」が存在しない世界として紹介されているからだ。

そもそも「コピー/複製」の概念がない世界では何が起こるのか。それが主題だ。