週刊現代
「ならず者」に惹かれる作家・永瀬隼介さんが選ぶ「人生最高の10冊」~「足で稼ぐ」書き手になりたくて
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満遍なく選んだつもりが…

遠野物語・山の人生』を初めて読んだのは、大学1年生の時です。これこそ「物語」だと引き込まれました。

その頃の私は、鹿児島の霧島連山の麓から上京したばかり。東京で驚いたのは、夜中に懐中電灯なしで歩けること(笑)。田舎の夜は本当に真っ暗闇でしたからね。闇が深かった頃の日本の不思議な物語が描かれた『遠野物語』にハマったのは、郷愁もあってのことかもしれません。

遠野(岩手県)と鹿児島は遠く離れているのですが、私も河童や山人、神隠しや天狗といった『遠野物語』と同じような伝承を聞いて育ちました。

子供の頃、月夜に友達と火の玉を見に行ったものです。そんな田舎の伝承や習俗が、本書では短い中で完璧な物語になっていた。

本書を含め、10冊を選ぶにあたっては最初に読んだ時に感じた純粋な面白さを大切にしました。満遍なく選んだつもりだったんですが、見返してみると、やはり好みが出ますね。どうしても「ならず者」を書いた本が多い(笑)。どうも根っこの部分で、犯罪者や、常識から逸脱した人間の生き様に関心があるらしい。

2位には『冷血』を選びました。作家のカポーティが、カンザス州で起きた一家惨殺事件の犯人を5年以上かけて取材したノンフィクションノベルの先駆けです。

ノンフィクション=事実とノベル=虚構を一体化した傑作で、私の人生に欠かせない一冊です。

この本も、初めて読んだのは大学生の時。インド旅行中に仲良くなったバックパッカーに教えられました。「『冷血』も読んでないのに本好きを名乗るな。一晩だけ貸してやるから読め」と渡されたんです。

読み始めてすぐ夢中になったのですが、安宿だから客室はすぐ消灯してしまう。便所だったら電灯がつくと気づき、一晩中籠って読み耽りました。