週刊現代
「才能よりも根気。大事なのは、こつこつやること」〜本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』に励まされる人続出!
作家・宮下奈都インタビュー
〔Photo〕iStock

言葉のいらない世界と言葉にならない世界

―ピアノの音色に魅せられた青年が調律師として成長していく物語。多くの人の共感を集め、本屋大賞受賞となりました。おめでとうございます。

ありがとうございます。もともとピアノが大好きで、いつかピアノの話を書きたいと思っていたものですから、この作品で大きな賞をいただけたのは本当にうれしいです。

ピアノの話といっても、私の興味は活躍するピアニストの方に向いてはいなかったんですね。たまたま私のピアノを長年調律している方が個性的で、お話も楽しくて。

私のピアノは3歳の頃に納品された古いものです。ピアノは羊毛フェルトでできたハンマーが弦を打って音が鳴るのですが、「昔のピアノはいい草を食べたいい羊の毛を贅沢に使ってできているから、とてもやさしい音がします」という言葉が印象的で。

調律師って、なんだか面白い仕事だなと思ったのがきっかけで、何人かの調律師さんに話を伺いました。するとみなさん独自に、音楽への情熱や仕事への意識をお持ちなんです。これを作品として取り上げたい、と思うようになりました。

―物語の舞台は北海道。主人公は山深い森に生まれ育った外村です。

もうひとつ、物語の設定に関わっている私の体験では、北海道への家族での山村留学があります。'13年から1年間、子供3人と私たち夫婦は大雪山国立公園内のトムラウシ地区で暮らしました。

とにかく自然が素晴らしい場所で、山々を眺めていると「言葉がいらない」と思ってしまうんですよ、作家なのに(笑)。

そこで、この景色が言葉にならないという感覚と、私が好きなピアノの音を言葉にするのが難しいという感覚は何だか似ている、と考えて、両方の世界を言葉で繋げて表現してみたい、と思いました。それで、森で生まれた少年が調律師になる物語を書き始めたんです。