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朝霞市少女監禁事件を追った元刑事が明かす「捜査活動」のリアル
〔PHOTO〕 iStock

文/小川泰平(元神奈川県警刑事・犯罪ジャーナリスト)

「家出」から「事件」へ、確信の瞬間

2016年3月27日(日曜日)午後、1本の電話が入りました。「朝霞の少女が無事に保護された」という連絡でした。

まだ本人との確認は取れていないが、母親は少女が保護されている中野警察署に向かっているとのこと。父親は自宅にいるというので、私は埼玉県の朝霞市に向かいました。

ちょうど2年前。2014年3月10日(月曜日)午後4時前、当時中学1年生の少女が下校途中に行方不明になりました。その日の午後5時頃、自宅の郵便ポストに「家も学校もちょっと休みたいです。しばらく友達の家です。さがさないでください。○○○○」とフルネームで書かれたメモが残されていました。保護者の要望もあり、3月13日には公開捜査となりました。

公開捜査後の3月19日、上尾(埼玉県)の消印(3月15日)の押された封書が届きます。

「私は元気に過ごしているよ。いろんな人に迷惑かけてごめんなさい。○○」と、今度は文末に名字はなく、名前だけがありました。

通常、中学1年生の少女が行方不明ともなれば各テレビ局のワイドショーや情報番組の関係者で現場はごった返すはずです。しかし、各局の報道セクションの社会部から「警察は『家出』の可能性が高いとみている」との情報が上がっていた関係で、当初、この件が大きく取り上げられることはありませんでした。

私が、この事件と向き合うきっかけになったのは、2014年12月29日に放送された『緊急!公開大捜索SP』(TBS系)という生放送の番組でした。私はこの事件に本格的に取り組むことにし、2014年10月から何度も現場に赴き、中学校から自宅までの下校コースを何度も歩きました。途中の防犯カメラに少女が映っていることは確認されていましたが、その前後に不審者の影はありません。

少女のご両親から、私は何度も話を聞きました。その際、父親、母親、と別々に話を聞きました。信用していないわけではありませんが、あらゆる可能性を考えてのことです。当たり前のことですが、彼らは憔悴しきって、話を聞くのも申し訳ないほどでした。

中学校の担任の先生からも1対1で話を聞くことが出来ました。私の経験上、学校の先生は子供のことを本当によく知っています。