読書人の雑誌『本』 ブルーバックス
人気博士が教える「心をグッとつかむ話」のコツ
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文・森和俊(京都大学大学院教授)

講義中の胸の内

大学教授という職業柄、人前で話す機会は多くあります。

京大理学部での通常講義が年間50回弱あり、そのほか依頼があればどこにでも出かけて授業、セミナー、講演を行っています。2日間で90分授業6回という集中講義を行ったこともあります。

このようにいくらでも話すのですが、そのときいちばん困るのが、授業・講演中に寝られることです。私の話はそんなにつまらないのかと相当へこみます。

私の専門は、生命現象を分子のレベルで解明しようとする分子生物学です。子が親に似るのは、二重らせん構造を持つDNAという遺伝物質を受け継ぐから、ということは皆さんもご存知だと思います。

この遺伝情報をもとにしてタンパク質が産み出されます。タンパク質は、20種類のアミノ酸が数珠つなぎになったもので、生命活動を担う立役者。このタンパク質がきちんと働くように品質管理をしているのが「小胞体ストレス応答」と呼ばれる仕組みで、私が生涯を捧げた研究テーマです。

私たちが今この瞬間生きていられるのは、小胞体ストレス応答が正しく機能しているからといっても過言ではありません。