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135万部のベストセラー『嫌われる勇気』はこうして生まれた~構想16年、初版8000部からの挑戦

発売以来じわじわと口コミで評判が広まり、ついに100万部を超えるヒットに――。フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と呼ばれるアルフレッド・アドラーの思想を「哲人と青年による対話篇」の物語形式でまとめた『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』が異例のロングセラーを記録している。

発売から2年3カ月で国内累計135万部を発行し、さらに韓国で115万部、台湾で29万部を超えるなど、その勢いはとどまることをしらない。本年2月には続編にあたる『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えⅡ』が刊行され、早くも2016年を代表するベストセラーの一つになっている。

なぜこれほどのヒット作となったのか。4月下旬、共著者の一人であるライターの古賀史健氏が「上阪徹のブックライター塾」(※最終ページで説明)に招かれ、上阪徹氏による公開インタビューに臨んだ。塾生限定50人を前に明かされた、『嫌われる勇気』誕生秘話をここに公開!

「これは売れるぞ」と確信した瞬間

アルフレッド・アドラー【PHOTO】gettyimages

上阪 120万部突破、おめでとうございます。ミリオンセラーになると予想しておられましたか?

古賀 いえ、全然。内容については、かなり自信を持てるものを作れたと思っていましたが、まさかここまで売れるとは、という感じです。

上阪 「これは売れるぞ」と、手応えを感じたのは、どのあたりからですか?

古賀 出版されたのは2013年冬ですが、その執筆中に、「古賀さん、今どんな仕事をしてるんですか?」と聞かれて、「2013年に出版されるあらゆる本の中で、たぶん一番面白いものを書いています」と答えた記憶があるんです。その頃にはもう、内容については相当の手応えを感じていたのでしょうね。

上阪 でも、数については全然読めなかった?

古賀 はい。初版は8000部でしたし、部数よりも「残る本」として考えていました。ただ、発売1ヵ月後あたりから、著名なブロガーさんが紹介してくださったり、フェイスブックやツイッターなどネットで口コミが広がり始めたりして、じわじわと売れていきました。

上阪 この『嫌われる勇気』という本は、そんなに簡単な内容ではないですよね。おそらく読者は読みながら、内省や自問自答する場面もあるだろうし、1~2時間でさらっと読めるものでもない。

古賀 そうですね。「哲人」と「青年」の哲学的な対話によって物語が進んでいく構成で、小説でも、ビジネス書でもない。どちらかと言うと哲学の入門書に近い。かなり異色だと思います。

上阪 そんなに簡単ではないこの本が、ミリオンセラーになるのはすごいですよね。どうして、こんなに売れているんでしょう?

古賀 これまでの常識を覆して、「えっ、そうなの!?」と思わせるメッセージばかりだということが、大きな理由だと思います。たとえば、アドラーは「人間のすべての悩みは対人関係である」、「トラウマは存在しない」、「人はいまこの瞬間から、幸せになれる」などと断言しているんですね。読者からは、「こんな考え方があるのか!と、目からウロコが落ちました」といった感想を多くいただきます。

上阪 そういった悩みを、現代日本人の多くが抱えていた、ということなんでしょうね。

古賀 はい。その悩みに対して、タイトルでまず「嫌われる勇気」が必要だと言い切っていますから。特に、対人関係の悩みについては、SNSなどの普及で、人付き合いの難しさが増している背景もあるかもしれません。実はこの本、実店舗を持つ書店だけでなく、アマゾンなどのネット書店での売れ行きが良かったんです。それだけ、ネットを利用している読者層に何か響くものがあったのかな、と思いますね。