50歳を目前に、ひとりで楽しむ「大人の贅沢」

リレー読書日記・生島淳
〔PHOTO〕iStock

文/生島淳

歳を重ねるということ

黄金週間にモノマネの番組を見て、茫然としてしまった。まず、モノマネの対象が分からないし、正直、面白くない。でも、スタジオにいるタレントは笑っている。もう、テレビから「お呼びでない」世代になってしまったようだ。

そんな時、大学のサークルの先輩である坪内祐三さんの『昭和にサヨウナラ』を読んだ。

坪内さんは私の九つ歳上だが、大学の集まりによく顔を出されていた。坪内さんは生まれが東京で、気仙沼で育った私とはカルチャーが違うわけだが、だからこそ、坪内さんの本には刺激がある。ひと世代上の感覚が勉強になるのだ。

本書を読んで感じるのは「喪失感」である。今年58歳を迎えた坪内さんは、年上の友人、先輩たちを相次いで喪う。

久世光彦、丸谷才一、赤瀬川原平、野坂昭如といった諸氏との出会い、思い出が綴られる。

坪内さんは、先輩たちのことがとても好きなのだと思う(その分、ケンカもたくさんしている)。面白いのは、追悼でありながらも、そこには怒りが含まれていることで、特に十八代目中村勘三郎を喪ったことを、坪内さんはこう表現する。

「ずっと観続けていたいと思っていたのに、その約束を破った勘三郎さん、私はあなたに、大声でバカヤローと言いたい」

これは、40代にはない感覚だ。還暦を前にして、年上の友人たちが消えていくという事実(馴染みの建物、たとえば東急プラザやお店も……)。

もうすぐ、自分もそうした思いを抱くことになるかと思うと、なんだかため息が出てくる。しかし、歳を重ねるということは、そういうことなのだと思う。

街のスケッチが想像力を刺激する

坪内さんの1歳年上で、同じく早稲田大学に学んだのが、作家の黒木亮さんだ。黒木さんは学生時代に箱根駅伝を走っており(瀬古利彦さんからタスキを受けた)、陸上を通して知己を得たのだが、黒木さんが大学卒業後に銀行を振り出しに、どんな道筋をたどって作家となったのか、『世界をこの目で』を読んで知ることが出来た。

黒木さんの小説の特徴は、綿密な取材に基づいていることだ。銀行員時代を皮切りにして、これまでに訪れた国は78ヵ国にのぼる。本書では紀行文もあれば、「イスラム国問題と米国のウラ事情」のような現代を読み解くエッセイ、さらに作品を書くまでの裏話も読める。

私は黒木さんが20代でカイロ・アメリカン大学に留学していた時代のエピソード、「エジプトの“カエル跳び”」が印象に残った。

銀行からの派遣でアラビア語の研修のためカイロに赴くが、そこで黒木さんは一念発起して修士コースに挑戦する。クセのある教授連とのやりとりも面白いが、街のスケッチが想像力を刺激する。