三菱自「買い取り責任」なぜ報じない!この国は、本当に先進国なのか
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燃費偽装は契約解除の理由になる

三菱自動車の燃費偽装問題。一連の報道を見ていて、大きな違和感を持つことがある。

それは、消費者の目線に立った報道がほとんどないことだ。マスコミは、偽装の経緯の解明や真の責任者は誰なのか、会社ぐるみではないのかということを追及しつつ、今後の日産自動車による三菱再生のストーリーを詳しく伝えている。

しかし、昨年11月には燃費データがおかしいと気付いて三菱に問い合わせたという日産が、その後、今年の4月まで販売を続けたことに対する責任を追及する報道はない。知っていて放っておいたのなら、三菱と同罪ではないのか。

そして、燃費偽装車の購入者にどのような補償が行われるのかについても、詳しく報じられていない。具体的に三菱自動車や日産に問い質す新聞や、テレビ局は存在しないのだろうか。

そもそも今回の事件は、三菱側が故意に顧客を騙して車を売った詐欺事件だ。責任は100%、三菱にある。軽自動車の場合、顧客は「経済性」を重視する。燃費が10%も悪いと知っていれば買わなかったという顧客は多いだろう。購入者は、詐欺・錯誤を理由に契約の取り消し・無効を主張できるはずだ。

現に、引き渡し前の顧客に対して、三菱自動車の代理店はキャンセルに応じている。これは、燃費偽装が契約解除の理由になることを認めたのと同じ。購入済みの顧客から要求があれば、買い取りをしなければならないということではないか。

ところが、経済産業省も国土交通省も、そしてマスコミも、何故か、こと「買い取り」については言及しない。買い取り負担額が大きく、経営に深刻な影響が及ぶからだろうか。そこには、官僚・マスコミと大企業との慣れ合いがあるように思える。消費者は、常に二の次なのだ。

これでも先進国といえるのか

今、報じられているのは、ガソリン代の差額分の補償とエコカー減税分の国への返還だけ。

しかし、それでは足りない。乗り続ける人への今後のガソリン代の差額分はもちろん、ブランド価値の毀損分の補償も必要だ。騙されたことへの精神的な損害の賠償という議論もある。それらをどう見積もるのかは、難しい問題だ。やはり、買い取りを選択肢に加えることが、万全な消費者保護の観点では必要不可欠ではないか。

ちなみに、排ガス規制逃れを犯したドイツのフォルクスワーゲン社は、米国で買い取りを求められた。つい先日、韓国では日産が排ガス不正をした疑いが浮上。日産は否定しているが、早くも消費者が購入代金返還要求の集団訴訟を起こすと報道されている。

これに対し、日本では、政府はもちろん、マスコミも買い取りについて、議論さえしない。集団訴訟も非常に難しく、消費者は司法にも頼れない。

本稿執筆中に、今度はスズキの燃費不正問題が報じられた。同社の役員名簿を見ると、少なくとも2人の経産省OB役員がいる。これでは、お役所がメーカー寄りの対応を取ろうとするのは明らかだ。消費者庁も各省からの出向者に支配されている。

大企業が優先、消費者は常に後回しの国、日本。これでは、とても先進国とは言えないのではないか。

『週刊現代』2016年6月4日号より