ゴルフ
日本のゴルフ界も見習いたい、マスターズの舞台"オーガスタ"が見せる「開いて閉じる」人気獲得戦略
スコットランドの名門、ミュアフィールドのクラブハウス〔PHOTO〕gettyimages

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

メンバーシップのゴルフクラブが、ステイタスを上げ、フェイムを保つためには、どうしたらいいか。どうやらそれは永遠の命題のようで、昔も今も名高きゴルフクラブが試行錯誤を続けている。

先日、スコットランドの名門、ミュアフィールドが女性メンバーを受け入れるべきかどうかを男性メンバーたちに問う投票を行ない、規定変更に必用な3分の2の賛同が得られなかったため、これまで通り、男性だけの「メンズクラブ」という形態を続行すると決めた。

ミュアフィールドの男性メンバーたちは、女性メンバーを拒否することで自分たちがこれまで満喫してきた利益や雰囲気を保とうとしたのだが、それは時代に逆行する排他性と見なされ、英国ゴルフの総本山R&Aは同クラブを全英オープンの舞台となる開催10コースのローテーションから外すと決めた。

ミュアフィールドは女性メンバーを拒んだことで、全英オープンという由緒あるメジャー大会から逆に拒まれてしまったわけで、その差し引きの結果が最終的にプラスになるのか、マイナスになるのかは、今の段階では判断がつかない。

オーガスタの「全方位外交」

マスターズの舞台、オーガスタナショナルは、かつては最も排他的なゴルフクラブの1つと言われていた。

メンバーの人数もメンバーになるための条件も明かされておらず、たとえ巨万の富を築いた大金持ちでもメンバーとしてふさわしくないと判断されればメンバーになれないというのが、もっぱらの噂だ。

だが、近年のオーガスタは、どんどんオープンな姿勢を取り始めている。2009年にはアジア・アマチュア選手権(現アジア・パシフィック・アマチュア選手権)を創設して、アジアの若者をマスターズへ、世界のゴルフ界へと羽ばたかせる一助を担い始めた。

それは、オーガスタ自身が羽根を広げ、グローバル化に乗り出した姿勢の表れだ。

マスターズの舞台、オーガスタのクラブハウス〔PHOTO〕gettyimages

オーガスタも、かつては男性オンリーのメンズクラブで、女性の権利保護団体から大々的な批判を受けたこともあったが、2012年からは女性メンバーを受け入れ始め、ビッグニュースになった。

さらに2014年からはジュニアゴルファーを対象にしたドライブ・チップ&パット・コンテストを他のゴルフ団体と共催で創設。その最終戦をマスターズウィークにオーガスタで行なうことで話題性を喚起している。

そうやって年齢や性別にかかわらず、すべての人々にオーガスタに親しんでもらおうという全方位外交を推進する一方で、オーガスタならではの独自の決めごとは頑なに守り通している。

たとえば、マスターズ優勝者のグリーンジャケットに対しても細かな決まりがある。マスターズを取材するメディアに対しても、携帯電話の使用からメディアセンター内の飲食物の持ち出しに至るまで細かな規定があり、違反者は即退去を命じられる。コース上では「走ってはいけない」。だが、その理由は「明かさない」。

全方位外交で開かれたオーガスタを演出しつつ、不可思議な決めごとによって独自性を保つ。そんな「開いて、閉じる」戦略は、おそらくは好結果につながっているのだろう。

マスターズ開催による収益は伸びているようで、オーガスタの敷地内には新しいお土産ショップや新しい憩いの場が設けられ、そこに続く散策道が増設されたりで、年々、静かに拡大している。

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