自動車メーカーはなぜ「不正の誘惑」に負けるのか? 不毛な「カタログ燃費競争」と国交省の「罪」
消費者置き去りの制度的欠陥
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不正をしようと思えば、いくらでもできる

「今回の不正はあってはならないこと。仕組み(自己認証制度)の根幹を揺るがす不正だが、再発防止のためにも仕組み自体を見直す必要がある。そのため、国土交通省でもタスクフォースのチームができている」

日本自動車工業会の西川廣人会長(日産自動車代表取締役CCO<チーフコンペティティブオフィサー>)は19日、就任会見でこう語った。「今回の不正」とは、相次いで発覚した三菱自動車やスズキの燃費データ不正測定問題のことだ。

西川氏も指摘するように、今回のような不正が起こった背景には、制度の欠陥がある。加えて、過剰な「カタログ燃費競争」も不正を誘発した。業界内には「制度の不備を分かっていながら見過ごしてきた国土交通省の責任も重い」といった声も出ている。

まず、自動車の自己認証の制度について簡単に説明しよう。

自動車メーカーが新車を生産・発売する場合、型式指定が必要となる。それを取得するためには、メーカーが提出したサンプルの車について保安基準などを国が審査して型式指定後、それを得たメーカーが自社で保安基準などを改めて確認し、完成検査終了証を発行する仕組みだ。この制度によって、工場から出荷する新車は車検を受けたものと見なされる。

国の審査は、国土交通省の外郭団体である自動車技術総合機構が屋内試験場にある「シャシーダイナモ」と呼ばれるローラ上の機械で行う。安全や環境性能が確認されるが、燃費や排ガスもここで確認された値が販売時のカタログに記入される。

実際の路上を走る場合には、空気抵抗などがかかるため、シャシーダイナモにメーカーが予め計測した走行抵抗値などのデータを入力して、試験が行われる。

今回の三菱自動車の不正は二つだ。一つは抵抗値の計測方法が道路車両運送法に定められたもの以外で行ったことと、もう一つは複数の計測データの平均値を取るべきところを、燃費が良くなるように小さい値を意図的に選んだことだ。

この仕組みは、メーカーが計測したデータに不正がないという「性善説」の上に成り立つものである。利点は行政手続きの簡素化である。型式審査は変更分も含めると年間に約4000件ある。メーカーの申請数値を一つひとつ確認していたら、行政の肥大化にもつながりかねないからだ。

ただ、不正しようと思えばいくらでもできる仕組みでもある。