中国
「屈辱の100年を乗り越え、世界の王となれ」習近平率いる中華帝国の野望を読み解く
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毛沢東が墓場から這い出してきた!?

中国の「新皇帝」となった習近平は、21世紀の東アジアに「パックス・チャイナ」を創ろうとしている――。

27年にわたって中国問題をウォッチし続けてきたジャーナリストの近藤大介氏が、中国の要人、日本政府の中枢にいる人物たちを取材した記録をまとめた『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』が発売された。

習近平が国家主席に就任して以降、東アジアでは尖閣紛争や南シナ海衝突、さらに北朝鮮の暴走など様々な外交イベントが発生したが、その舞台裏でなにが起こっていたのか、日米中の要人たちの生々しい言葉とともに、詳細が記されている。

これからの世界情勢を読み解く上で必読の一冊。本書のなかから、その一部を特別公開する。

「習近平外交」は、「目の上のたんこぶ」である日本にどう対抗していくかということから始動した。

2 0 1 2年9月11日に野田佳彦政権が尖閣諸島を国有化したことから、中国が一斉反発し、中国各地で反日デモが吹き荒れた。暴徒と化した中国人が日系のデパートや工場などを破壊し、抗議デモや狼藉は、全国約1 1 0ヵ所に及んだ。

9月27日には、北京の人民大会堂で、胡錦 主席も列席して盛大な国交正常化40周年記念式典が予定されていたが、中国国内の異様な「殺気」を受けて、立ち消えになった。日中関係はまさに、国交正常化40年で、最悪の時を迎えた。

その「怒気」がまだ冷めやらない同年11月15日、第18回中国共産党大会において、習近平が、胡錦 の後継者として、新たに中国共産党中央委員会総書記、および党中央軍事委員会主席に選出された。翌年3月に国家主席に選出されて、「2期10年」の習近平時代が完全始動する。

私はこの10年に一度の中国共産党の「政権交代」を取材するため、北京へ来ていた。同日午前11時53分、予定より53分も遅れて、人民大会堂の東大庁に、記者団が待ち受けるお目当ての男が姿を見せた。習近平新総書記である。

新総書記は、李克強、張徳江、兪正声、劉雲山、王岐山、張高麗という「トップ7」(党中央政治局常務委員)を引き連れていた。そして中央の演壇に立ち、記者団に軽く右手を挙げると、標準中国語の野太い声で、13億6 7 8 2万の中国の民を指導する8 7 7 9万共産党員のトップとして、「就任演説」を述べた。

「わが民族は、偉大なる民族だ。5 0 0 0年以上にわたる文明の発展の中で、中華民族は人類の文明の進歩に不滅の貢献をしてきた。それが近代以降、艱難辛苦を経験し、最も危険な時期を迎えた。だが中国共産党の成立後、頑強に奮闘し、貧困の立ち遅れた旧中国を、繁栄と富強の新中国へと変えた。

中華民族の偉大なる復興の光明は、かつてないほどすぐ近くの前景にある。中華民族を世界民族の林の中で、さらに強く自立させるのだ!」

まるで「建国の父」毛沢東が、墓場から這い出してきたような演説だった。毛沢東は国内統一の偉業を成し遂げ、それを引き継いだ自分は中国を世界の強国にしていくと宣言したのである。その間の鄧小平、江沢民、胡錦濤という3世代の指導者は抜け落ちていた。