デフレ脱却への究極の一手「ヘリコプター・マネー」の効果はどれほどか
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日本政府がとるべき次の経済政策は?

5月18日に発表された2016年1-3月期の実質GDP成長率は季調済前期比+0.4%であった。「うるう年効果」を考慮すると、事実上は、ゼロ成長に近い。

筆者は、現在の日本が「リーマンショック級」の景気悪化に見舞われているとは思わない。だが、2014年4-6月期より予想インフレ率は再び低下傾向で推移している可能性が高く、その意味で、日本経済の先行きにはかなりの危機感を持っている。

筆者が試算した企業物価ベースでの予想インフレ率(日銀短観の販売価格判断DIの構成比データからカールソン・パーキン法を用いて推定)は、前期比年率換算ベースで-1.2%程度となっており、明らかに下落トレンドに転じている。

その結果、実質金利(国内銀行の新規約定金利から予想インフレ率を引いたもの)は上昇に転じている。この実質金利と設備投資(設備投資の変動率、もしくは投資率)は逆相関(実質金利の上昇局面では減少、ないしは低下)で、しかも、実質金利がやや先行する関係があるため、今後、設備投資の本格的な減速が懸念される(図表1)。

多くの局面で、設備投資の減速局面が始まると雇用環境も悪化する。ちなみに、今回の1-3月GDP統計では、実質雇用者報酬の伸び率は、季調済前期比で+1.3%、前年比で+2.7%(名目ではそれぞれ、+0.6%、+2.5%)と大きく伸びており、「アベノミクスでは賃金が全く伸びていない」との批判は現状認識として誤りである。ただ、賃金動向も今後はかなり不透明である。

このような経済環境下で最近、海外投資家、メディアを含め、日本政府がとりうる次なる経済政策として注目を集めつつあるのが、「ヘリコプター・マネー」である。

「ヘリコプター・マネー」とは、ノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者で、「マネタリスト」の総帥でもある故ミルトン・フリードマン氏が提唱した経済政策である。比較的最近では、前FRB議長のベン・バーナンキ氏がデフレ脱却のための「究極の選択肢」の一つとして指摘した。

「ヘリコプター・マネー」の原型は、「政府が(新たに)発行した国債を中央銀行が購入し、その代わりに発行した現金通貨をヘリコプターからばら撒けば、それを拾った人が、その現金を使って消費活動をすることで需要が拡大し、やがてはデフレを脱することができるだろう」という一種の「寓話」である(ミルトン・フリードマンの著書『貨幣の悪戯』に収録されている)。

もっとも、現実的に考えれば、現金をヘリコプターで撒くことは想定しづらい。しかも、それゆえ、現実的かつ具体的な政策としての「ヘリコプター・マネー」の定義は、論者によってまちまちであり、議論がいま一つかみ合っていない印象が強い(単純に「お金をばら撒く」ことを批判する論者もいるが、批判としてはまったくの論外である)。

とはいえ、筆者はこの手の経済論争には全く興味がないので、ここでは、勝手に筆者なりの「ヘリコプター・マネー」の定義を考えることにする。

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