女の悩みはなぜ永遠に続くのか?
50歳「普通主婦」が見出した新しい生きる価値観

中島京子インタビュー
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60年前の「女性論」から顧みる

―最新小説『彼女に関する十二章』は50歳の主婦、聖子さんの日常生活がユーモラスに描かれます。彼女が手にとり、夫とそれについて語り合うのが伊藤整のエッセイ『女性に関する十二章』。60年前のベストセラーなんですね。

2014年に『婦人公論』から連載のお話をいただいた時、読者層を考えて50代の女の人の話にしようと思いました。と同時に、これまでに『婦人公論』に連載されたものを振り返ってみたら、『女性に関する十二章』がぴったり60年前のものだったんです。戦後10年も経っていない頃ですよね。

女の人の権利も変わったから、改めて男女について考えましょうという企画だったようですが、「女は男のために装うものだ」という主張があったりして、やっぱり今読むと全体的に古臭い(笑)。

伊藤さんも頑張って新しい女性像を理解しようとしたんでしょうけれど、60年前の限界を感じました。ただ、これは現代の女の人がどうしたら生きやすくなるかを考えるための叩き台になると思ったんです。

―聖子さんは'85年に男女雇用機会均等法が制定されて以降の女性の生き方の変化を見てきた世代でもありますよね。

就職して結婚して、出産を機に会社を辞めて主婦になったという設定は、同じ世代の女性に多いパターンとして選びました。

私自身も男女雇用機会均等法の第一世代なんです。'80年代は女性の生き方がどんどん変わっていくイメージがありましたが、実際には総合職として就職したのに、そういう仕事が用意されていなかった、という人も多かった。

その後30年経って、日本の女の人の生き方は改善された部分もあるけれど、変わらない部分もたくさんある。自分の経験として感じることを考えながら書きました。

それに50歳というと、体調などいろんなことが変わる時期。主人公も結婚25年となり、子どもが家を出て、人生の後半に入ったことで自分の来し方行く末を考えざるを得なくなっています。そんな時に初恋の人のその後の人生を知ったり、彼の息子が現れるなどして過去の自分が現在の自分に問いかけてくるストーリーにしました。

今回はあえて細かく決めないで書き進めていったんです。途中で作者の自分でも驚くことが次々と起きてスリリングでした(笑)。若い時って、年をとったら思い出に浸りながら余生を過ごすイメージがありましたが、でもやっぱり人生は現在進行形であり、世の中も自分も変わっていく。それをポジティブにとらえていいのではないかな、と思いましたね。