防衛・安全保障
AI搭載「スマート兵器」に舵を切る米国防総省と、シリコンバレーの憂鬱
アメリカ国防総省の本部庁舎(通称「ペンタゴン」)〔PHOTO〕gettyimages

米国防総省がAI(人工知能)をベースに、軍事技術の抜本的改革を図っている。この分野で世界をリードするシリコンバレー、つまりハイテク・IT業界と連携し、スマート兵器の開発競争でロシアや中国を一気に引き離そうとしている。

●"Pentagon Turns to Silicon Valley for Edge in Artificial Intelligence" The New York Times, MAY 11, 2016

従来の軍事技術をチャラに

上の記事によれば、米国防総省は今回の兵器改革を「3度目の清算(Third Offset)」と呼んでいる。ここでは「offset」を「清算」と訳したが、もっと俗な言葉で言うと「チャラにする」という意味だ。

中国やロシアが、従来型の兵器開発で米国を激しく追い上げるなか、米国としては、そのように長年積み上げられた従来技術をいっそチャラにする。そして全く新種のスマート兵器へと飛び移ることで、ライバルたちとの差を一気に広げたいという意味だ。

「3度目」という言葉からも分かるように、過去にそうした軍事技術の清算は2度あった。1度目は1940~50年代にかけて進められた核兵器の開発。これを手にしたことによって、米国は当時、ソ連を中心とする東側諸国が確立した軍事的優位性を一気にひっくり返すことができた。

ただし、ソ連も後に核兵器を開発したことで、結局は元の木阿弥になったことは敢えて断るまでもない。また、当時、本当にソ連など共産圏の兵力が米国を上回っていたのかどうかも分からない。それは、あくまで冒頭のNYT記事で紹介された「米国側の言い分」である。

2度目の清算は、1970~80年代にかけて進められた軍事技術の効率化。これによって米国は、より小規模な兵力で、数に勝る兵力を持つソ連など東側諸国に対抗できるようになったという(これもまた、当時、本当にそういう状況であったのかどうかは分からない。同じく、冒頭の記事で紹介された米国側の言い分に過ぎない)。