ニヒル化する日本の「若者論」
〜グローバルとローカルの両極で進む、あやうい兆候

ニート、ロスジェネ、そして現在…
〔PHOTO〕iStock


文/
後藤和智(同人サークル「後藤和智事務所OffLine」代表)

若者はまだ本気出していないだけ?

2000年代初頭から現在にかけて、若い世代をめぐって様々な概念が、行政やマスコミ、そしてインターネットの住民などによって生み出されてきました。

それらの中には、短期間で消えてしまったものもあれば、前回取り上げた「ゆとり世代」などといった具合にほぼ差別語として定着してしまった感のあるものもあります。そして今なお用いられている言葉に「ニート」があります。

そもそも「ニート」(NEET:Not in Education, Employment and Training)という言葉はイギリスで生まれたものであり、対象とされる年齢層も狭く、また社会的排除などの広範な社会問題と絡めて論じられるべきものでした。しかし日本に輸入されてからは、この言葉が若い世代を見下すニュアンスを含むようになったのは否めないでしょう。

ところで、2016年5月1日に東京都大田区の東京流通センターで開催された「第22回文学フリマ東京」にサークルとして参加したとき、私のスペースに来てくださった一般参加者の方が「新書読みました!」と言ってくれた、ということがありました。

一体なんの新書なのか、と伺ったら、なんと私のデビュー作である『「ニート」って言うな!』(共著、光文社新書、2006年)のことでした。「10年前の本ですよそれ!?」と私は言いましたけど、同書の、少なくとも私のパートで指摘した「ニート」という概念に関する疑念は、現在も効力を失っていないと思います。

2016年2月6日東京新聞の配信記事では、厚生労働省の「地域若者サポートステーション」の取り組みが批判的に紹介されていました。

そのチラシの中には、「キミはまだ本気出してないだけ。」という文言が書かれております。無職ないし非正規雇用の若者は「本気出していないだけ」であるという見方は、いまの若い世代は正規・非正規に関わらず危うい労働環境、生活環境に置かれているという近年の指摘(これについては、藤田孝典『貧困世代――社会の監獄に閉じ込められた若者たち』〔講談社現代新書、2016年〕に詳しい)を無視したものであり、また『「ニート」って言うな!』で指摘した若い世代に対する偏った見方をいまだに引きずっているものです。

蛇足ですが、私はこの厚生労働省のチラシを、2015年12月に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット89」(2015年冬コミ)のサークルスペースに置いてあるのを見ました。コミケでサークル参加するような人は、厚労省にとっては「本気出してない」ということになるのでしょうか?

このような、2000年代の若い世代に対するイメージがいまだに生き残っている一方で、若い世代の「働き方」に関する言論は変化してきています。しかしそれに対する総括はあまり行われていないようにも思えます。

今回はそれらの言説の変遷を見て、現代の若者論、特に若者擁護論がどのようになっているかを見ていきましょう。