スターたちが挑む「中間管理職」
〜「二軍監督」はこんなにも難しい

小笠原道大、掛布雅之、斎藤雅樹らが明かす

勝利を求め、長期的に人を育て、即戦力が不可欠な一軍の要望にも応える。肩書は監督でも一軍より求められるものが多い。今季から新しい職場についた元名選手たちはどんな覚悟を抱いているのか。

「動」の掛布

〔PHOTO〕wikipedia

ゴールデンウィークに28年振りに聖地・甲子園にミスタータイガースが帰ってきた。5月3日、4日の両日とも、入場者数は1万人を超え、ファームの試合としては異例の入り。縦縞のユニフォームに縫い付けられた背番号「31」が手を挙げただけで、スタンドが沸く。

顔にはいくつもの皺が刻まれ、帽子からはみ出た頭髪は真っ白になり、ベルトの上に腹の肉が乗ってはいるが、放つ空気感はスターそのもの。

今年の阪神のテーマは「超変革」だ。その目玉は、二人の新監督である。一人は一軍監督の金本知憲。そして、もう一人が現役引退以来、久しぶりにユニフォームを着た二軍監督の掛布雅之だ。

その掛布の手ほどきを受けた選手たちが今、次々と一軍で結果を出している。

キャンプ中は二軍スタートとなったルーキーの高山俊などが外野のレギュラー争いを演じ、3年目の和製大砲候補、横田慎太郎と陽川尚将が初めて一軍の舞台を踏み、さらには育成契約となっていた苦節7年目の捕手・原口文仁は4月27日に支配下登録され、即一軍昇格。その日の試合で初ヒットを放つなど、一球団の枠を越え、ファームの希望の星となっている。

まるで手品師のようだ。だが掛布は種も仕掛けもないことを強調する。

「選手には旬ってものがある。金本監督がその時期に早く昇格を決断してくれ、上げたらすぐ使ってくれる。だから、結果がついてくる」

下部組織と上部組織の信頼関係は、こうした配慮から築かれる。一軍で必要とされる選手の育成が任務の「中間管理職」でもある掛布が続ける。

「お陰でファームの選手は、とてもいい緊張感を持ってプレーできている。これなら一軍に上がっても戸惑うことなく、すぐにやってくれる」

ベンチの奥で座っている監督が多い中、掛布はいつでもベンチの最前列で指揮を執る。攻撃中は立ち上がり、柵に腕をかけ、一打ごと、手を叩き、声を出す。そして掛布の代わりにサインを出す打撃コーチと身振り手振りを交え、盛んにバッティング談義をしている。采配でも積極的に単独スチールを仕掛けるなど「動」の監督である掛布には、じつに華がある。

一軍監督と比べると地味な存在の二軍監督だが、今シーズンは掛布を始め、ビッグネームの二軍監督就任が相次いだ。