KOできなかったからこそ見えた“モンスター”井上尚弥の潜在能力
挑戦者のカルモナも大変な巧者であった

多くのファンは、スカッとするKO勝ちを求めていたのであろう。最終12ラウンド終了のゴングが打ち鳴らされた直後、場内からタメ息が漏れた。

だが私は逆に、“モンスター”と称されるチャンピオンの引き出しの多さに驚かされた。5月8日、東京・有明コロシアムで行われたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、井上尚弥(大橋=王者)×ダビド・カルモナ(メキシコ=1位)戦のことである。
 
1ラウンドから井上は果敢に攻めた。前に出て挑戦者をロープ際に追い込み右の強打を炸裂させると場内は大いに盛り上がる。序盤でのKO勝ちへの期待が一気に高まったが、今回は、そうはいかなかった。
 
攻撃を続けるのだが、なかなか相手を倒すには至らない。実は、この試合の2ラウンドに井上は古傷のある右拳を傷めてしまっていた。その後、左拳にも痛みを感じるようになったという。翌日のスポーツ紙には、井上がKO勝ちできなかったのは拳を負傷したためとのニュアンスの記事が掲載されていたが、理由は、それだけではなかっただろう。