企業・経営
佐藤優が斬る「右肩下がりの時代」の病理〜三菱自動車はなぜあんな「不正」に走ったか?
〔PHOTO〕gettyimages

燃料データ不正問題を起こした三菱自動車。3度目の不祥事となる今回の社長会見を見て、佐藤優氏はあることに引っかかったという。それは、組織防衛の危機管理能力の低下をうかがわせるに十分なものだった……。

※本記事は、『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまる・じゃぱん」の放送内容(2016年4月29日放送)の一部抜粋です。

社長会見に透けて見えた危機管理能力の低下

邦丸: 「三菱重工業」は日本の重厚長大のトップに立つ大きな会社ですよね。

佐藤: はい。戦前はゼロ戦を造っていた企業です。

邦丸: そのなかで、大きくとらえた三菱グループは、三菱自動車の燃費データ不正問題を起こしました。

佐藤: これも深刻です。

邦丸: 三菱重工の子会社という形で誕生し成長してきたわけですけれども、この三菱自動車の問題と今回の三菱重工業の件(大型客船建造の遅れにより508億円の特別損失を計上)はどんな関係があるのでしょうか?

佐藤: 直接は関係ないんですけれど、逆に深刻なところは、こういう日本の超エリートのトップ企業の疲れが表れているという点です。

三菱自動車はかつて2度もリコール隠しを起こしていたわけでしょ(2000年、2004年)。日本の企業経営者たちは、雪印の事件(2000年、雪印乳業の工場汚染を原因とする集団食中毒)を頭に置いていたと思うんですよ。1回目はまだ復帰チャンスがあるんです。しかし、2回やると、ブランド企業でも潰れる。雪印だけでなく、どの企業でも懲りていると思うんです。

ところが、三菱自動車では3回目が起きてしまった。自分の会社の内部告発という自浄能力ではなくて、納品先の日産自動車が「これは何だ」という話になったということですよね。しかも、社長が会見に出てきて「不正があった」ということを言った。「不正がある」ということは、率直に言うと「捕まえてください」という意味です。

要するに、「不正認識がある」ということに直結しますから、これは通常、社長は会見では言わないことなんです。

お詫び会見では、「世間をお騒がせして申し訳ありません」、「不適切な行いがあったので調べております」、あるいは「不適切」とさえ言わないこともありますよね。これに対し一般の人は「ふざけるんじゃない」という感覚でしょうが、会見をする経営陣は、一般人への説明ということはあまり考えていないんです。なぜなら検察が会見を見ているから。

邦丸: なるほど。

佐藤: 経営陣は「いかにして事件化を避けるか」ということを考えているんです。だから、違法性の認識もないし、組織ぐるみでもないということを印象付ける会見をするんですが、三菱自動車の会見を見ている限り、「捕まえてください」という話でした。

となると、組織防衛の危機管理能力はどれぐらいあるのか、ということに関してちょっと心配になってくるんですよ。

邦丸: 会見に出る場合は必ず、顧問弁護士や法務関係者と相談して、あらゆることを360度検討してから出るのが一般的だと思っていました。

佐藤: はい。ですが、顧問弁護士というのは税金や著作権などの民事の専門家です。私の顧問弁護士は刑事事件の専門家なんです。刑事の顧問弁護士をつけているのは、普通は過激派か広域団体ですけどね。

邦丸: ふふふ。

佐藤: 私は刑事事件の経験があるので、こういったことで名誉棄損などの訴えを起こされたらまずいとか、あるいは取材で検察がらみの事件を見た時に、これはどの程度法に引っかかるかということで、刑事のプロが必要なんです。

三菱自動車は、恐らく刑事の弁護士に相談していない。あくまでもコンプライアンスなどの民事の範囲でのみ考えていて、事件化され自分たちが捕まるということは想定外でしょう。刑事弁護士に相談していたら、ああいう会見にはならないと思うんです。

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