ブーム再来の兆し 「K-1」を背負う格闘技界の新星が登場!~高校中退、タイでの修行…すべてを明かす
写真/小野塚章 協力/高須基一朗

道を歩けなくなりたくて

90年代、日本を揺るがすほどの一大ムーブメントを創り上げた「K-1」。その人気がいま、再燃している。かつてアンディ・フグや武蔵ら往年の選手をブラウン管越しに見て育った「格闘少年」たちがリングに上がり、旋風を巻き起こしているのだ。

「新生K-1」を背負って立つ選手たちを存分に紹介しているムック『K-1 NEW AGE』のなかから、代表格の一人である武尊(たける)選手のインタビューをお届けする。

「僕、道を歩けなくなりたいんです」

戦うモチベーションは何かと尋ねると、武尊はそう切り出した。

「格闘技ファンもそうじゃない人も、みんな自分のこと知ってる。みんな武尊ってすげぇって言う。ハリウッドとか韓流のスターが来日すると、何百人もファンが空港に集まってみんなワーッて盛り上がるじゃないですか。あんなふうになりたい。普通の選手じゃイヤなんです。スターじゃないと」

―昨年、こんなことがあった。ある格闘技イベントの記者会見の日。急遽リクエストされた上半身裸での写真撮影に、武尊は強く難色を示した。腹筋のカットが、“撮影用”のコンディションではなかったのだ。

「やっぱり写真を撮るならちゃんと準備しないと。最高にカッコいい自分を見てほしいから」

やむなく撮影には応じたものの、シャッターを切るごとにカメラマンと時間をかけて腹筋の写りや表情をチェック。そして、何度も撮り直し。ほかの選手が10分かからないうちに撮影を終える中、武尊は30分以上の時間をかけた。スターであるために、たった一枚の写真も絶対に妥協したくなかったのだ。

アンディ・フグに憧れて

大のプロレスファンだった父の影響で、小さな頃からプロレスを見て育った。ただ、1991年生まれでありながら、武尊が詳しいのは70年代から80年代にかけての古き時代のプロレスだ。父は、自分がかつて熱狂した往年の選手たちの映像を、幼い武尊に見せていたのだ。

「僕の記憶にいちばん残っているのは、アントニオ猪木さんとか、初代タイガーマスクの頃のプロレスです。その少し後のプロレスも見ていたんですけど、グレート・ムタのスピーディーな感じとか、カッコよくてすごく好きでしたね。その頃から“華やかさ”とか“男の強さ”とか、そういったものに憧れを抱くようになりました。僕の目立ちたがり屋のルーツも、きっとそこなんじゃないかなと思います」

小学2年の頃、武尊はテレビで放送されていた「K‐1ワールドグランプリ」を目にする。画面の中では、赤や青の光線がまぶしく交差する中、空手着をまとったアンディ・フグが世界のトップファイターたちを次々と地に沈めていた。

「カッコよかった。空手をやれば、自分もあんな華やかな世界で戦えるかもしれない。空手をやればK‐1に出られるかもしれない。そう思って、すぐに空手をやりたいって親に言いました」

空手着を羽織る前から、すでにリングネームは決まっていた。ファーストネームの「武尊」。歴史好きの父によって、ヤマトタケルノミコトに因んでつけられた。頭の中では、自分の名をコールするリングアナの声までイメージできていた。