週刊現代
「起承転結」が通用するのは日本人だけ!算数のできない人に仕事を任せてはいけない
社会人のための教養講座
マークシート式テストの弊害は大きい〔PHOTO〕gettyimages

「ゆとり教師」の実態

前回(佐藤優と学ぶ、目からウロコの「論理学入門」)に引き続いて、もう少し「論理」、理屈のお話にお付き合いください。

英語力強化ばかりが叫ばれる昨今ですが、グローバル化が進むと、実は英語力よりも論理力が重要になります。国や文化が違う人にも、自分の考えを筋道立てて説明する力が問われるからです。

しかし近年、日本人の論理力、中でも数学力はこれまでになく低迷しているのが現実です。

例えば、分数の足し算ができない大学生は今や珍しくなくなりました。数学教育の重要性を説いている、数学者の芳沢光雄さんによれば、20年ほど前から「2分の1たす3分の1」の答えを「5分の2(正解は6分の5)」と答える大学生の割合が、全体の約17パーセントに達しているそうです。

問題は、なぜこんなことになったのかです。まず原因のひとつとして、大学の偏差値競争の激化が挙げられます。

実は、入試科目から数学をなくすと、受験者が増えて偏差値が5ポイントも上がる。それで、私立大学の文系学部の多くは、数学の入試をやめました。その結果、数学がまったくできない学生が経済学部に入り、そのまま大学院にも進学するという「異常事態」が普通になってしまった。こうして、分数の足し算さえできない若者が、毎年大量に生み出されるようになったわけです。

もうひとつの大きな原因が、センター試験のようなマークシート式のテストが増えたこと。マークシートには様々な欠点があります。

例えば、5つの選択肢がある問題の場合、出題者はなんとなく「端っこの1番と5番には正解をおきたくない」と思ってしまうので、結果として3番に正解が偏ってしまう。これは統計的にも有意な差が出るそうです。

また、当然ながらマークシートでは記述力を測ることができません。その結果、例えば濃度や速さの計算といった、文章題・応用問題が理解できない学生が増えている。

憂慮すべきは、大学生はまだしも、小学校レベルの算数ができない社会人が大量生産されているということ。さらには驚くべきことに、ここ数年、ゆとり教育とも相まって、教師の中にもそうした人がたくさん現れているということです。

教師自身が理解できていないことを、子供に教えられるはずがありません。算数が分からない教師が、算数ができない日本人を再生産している。深刻な問題です。

今、団塊世代の退職とゆとり教育の見直しによって、教員採用者数が急増しています。全国の小・中・高の公立学校の採用者数は、'01年に約1万4700人だったのが、10年後の'11年には約2万6000人に増えたそうです。

このため、特に採用枠が地方に比べて大幅に増えた東京などの大都市圏では、「3つの角度が全部異なる二等辺三角形がある」と、誤ったことを生徒の前で平然と言ってのける教師も現れている。ゆとり教育をやめて教師を増やした結果、ゆとり教育を受けた学力の不十分な若者が教師になっている、という皮肉な現実があるわけです。

笑えない話ですが、これは教育現場に限ったことではありません。今、企業の新人教育でも「数学力の弱い新人をどうするか」という問題が出てきている。

あなたの部下として、数学がからっきしできない新人が入ってきたら、まずは数学検定3級に合格できるレベルを目標にして指導するのがいいでしょう。数検3級は中学卒業レベルと同じで、これなら、どんなに数学の苦手な人でも、半年くらいの学習でクリアできるはずだと思います。

もしクリアできないようであれば、残念ですが、その人に大事な仕事を任せるのは危ないと考えていい。ただ、そんなことを言い出したら、国会議員だって「2分の1たす3分の1」の計算で、全員が正答できるかどうか分かりませんが……。

「仕事をするうえで、数学なんて必要ないじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、数学力をつけると、職場やチームの力は目に見えて強くなります。だから、「英語より先に数学」なんです。そうでないと、いくら英語ができても説得力が身に付かない。説得力を身に付けるには、数学のような論理力を鍛えることが欠かせません。

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