『世界一受けたい授業』でおなじみ河合敦さんが選ぶ「人生最高の10冊」

親の反対にも成功法則で抵抗

さて、歴史教師を目指すと決めたものの、受験では滑り止めの大学にしか合格できませんでした。その大学には史学科がなく、専門的な歴史の勉強はできないし、教師になるのも難しい。このままでいいのか、ともやもやした日々を過ごしていた時に読んだのが『運命は思い通りに操れる!』です。

表紙のイラストが、私が大好きなブルース・リーに何となく似ているだけで手に取ったのですが、一読して夢中になってしまいました。一言で言えば「人生は自分が思った通りになる」という成功法則本です。書いてあることは単純なのですが、当時の私には強く刺さりました。

特に車椅子マラソンの選手の話や障害のある人が頑張って本を出した事例など、多くの実例が紹介されているので説得力があったのです。

この本に感銘を受けた私は、史学科のある大学に入り直そうと決意しました。しかし親に反対されたため受験料や入学金を出してもらえません。そこで大学の授業と受験勉強に並行して家庭教師と塾講師、あとは居酒屋で働いてお金もためました。当時は、かなり熱い青年だったのです。

努力の甲斐あって念願の大学に入ってからは勉強もしましたが本を大量に読みました。もちろん歴史関連が多いのですが、成功の法則や心理術などをとにかく乱読しました。中でも印象深いのがスマイルズの『自助論』。成功法に関する本としては世界的名著です。

成功の法則というと、いかに楽をして大きな成果を得るかに関心が集まりがちですが、この本の視点はまったく違う。

書かれているのは「コツコツ一生懸命やるしかない。ただし、諦めずにやり続ければ必ず希望は叶う」ということ。この本を読んで20年以上が経ち、色々な経験もしましたが、改めてそれ以外の成功法則はないと思えますね。

私の大学時代、教員採用試験は本当に狭き門で、私も必死に勉強しました。時代はバブルでしたから、学生はそんな苦労をしなくても銀行や証券会社に入れたし、入社1年目から3桁のボーナスがもらえていた。仲間にもそうした道を選ぶ人が大勢いましたが、バブルはやがて崩壊するから気をつけた方がいい、と私は言っていました。

楽をして本当の幸せがつかめることはないと思っていたこともありますが、歴史を学ぶ中で、第一次世界大戦中の好景気とバブルの状況が似ていると感じていたからです。龍馬に心酔していたこともあって、お金よりもよりよい世界の構築を目指すほうが大切だと感じてもいました。

振り返ると世間知らずな青臭い思いだったかもしれない。けれども、今でも歴史の面白さを伝えることを通じて、多くの人を幸せにできればいいと強く思っています。

(構成/平原悟)

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かわい・あつし/'65年東京都生まれ。多摩大学客員教授。日本テレビ系『世界一受けたい授業』などで歴史の面白エピソードを紹介し人気に。著書に『読めばすっきり! よくわかる日本史』など