世界経済
中国でひそかに進行する「もうひとつのバブル危機」
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最近、中国の不動産価格の上昇が目立つ。利下げや規制緩和を受けて住宅購入者向けの貸し出しが容易になり、多くの都市で住宅価格が上昇している。一部には、バブルの発生を懸念する見方もある。

そして、別の市場でも注意すべき動きが進んでいる。それは、中国で取引される鉄鉱石先物価格の上昇だ。すでに大連商品取引所(DCE)に上場されている鉄鉱石先物の価格は、年初来で60%程度上昇している。過剰な生産能力のリストラが急務である中国経済において、こうした“根拠なき熱狂”が広がっていることには注意が必要だ。

投機熱に煽られる鉄鉱石価格

リーマンショック後の4兆元(当時の邦貨換算額で60兆円程度)の巨額の景気刺激策の結果、中国の粗鋼生産能力は世界最大にまで拡大した。潜在的な粗鋼生産能力は年間11億トンから12億トンと言われる。昨年の実績を見ると、そのうち4億トン程度が過剰になっているとみられる。

わが国の粗鋼生産能力は年間1億トン程度だ。それに比べると、中国の鉄鋼業界が抱える過剰生産能力はまさに巨大だ。景気減速が進む中で過剰供給を解消するには、リストラを行い需給の調整を図るしかない。そして、理論的にはリストラ圧力が高い場合、世界の粗鋼、鉄鉱石の価格には下押し圧力がかかるはずだ。

しかし、中国では全く逆の動きが進んでいる。年初来、大連で取引される鉄鉱石先物は60%程度上昇した。そして、上海で取引される鉄筋先物を始め鉄鋼関連製品の価格持ち直しも進んできた。アナリストらが今年の鉄鉱石価格の見通しを上方修正するなど、強気な見方も多い。なお、中国政府はリストラの進展が価格を支えているとの見解を示している。

過剰な供給圧力が強いにもかかわらず鉄鉱石などの価格が上昇する状況は、“根拠なき熱狂”と呼ぶにふさわしい。そして、鉄鉱石などの価格高騰は中国の住宅価格の上昇に支えられているようだ。

度重なる利下げ、景気刺激策としての不動産購入に関する規制緩和に支えられ、中国の住宅価格は上昇している。それが鉄筋への需要観測を高め、投機に火をつけている。当局は商品先物取引への規制強化に乗り出しているが、どれほどの効果があるか定かではない。