「暗殺教室」はなぜ最高の学び場となるのか? 完全管理社会をタフに生き抜くために

武術と教育の接点を徹底討論
内田樹, 光岡英稔, 甲野善紀

生物は常に戦っている

光岡 「才能の最大化」について言えば、私は19歳でハワイに渡り、そこで武術を教えることになりました。会得したことをいかに次世代に伝えるか。これは『暗殺教室』でたんねんに描かれています。私の場合、教え方を間違えてしまい、うまく育たなかった人もいます。「才能の最大化」には至りませんでした。

光岡秀稔(みつおか・ひでとし)1972年生まれ。日本韓氏意拳学会会長。国際武学研究会代表。

ハワイアンやサモアンだと、放っておいたほうが強くなります。なるべく手を加えず、余計なことを教えない。ただ環境に変化があるということだけを教えておけば、すごく伸びる。

けれども彼らに型のようなものを伝えると、それに拘束されてしまって、一気に弱くなっていく。本来、みなぎっていた本能や血がどんどん消されていくからです。失敗した過去の始末というのは、ほとんどの場合できないと思ったほうがいいですね。

だから、私は他の先生のところに習いに行くことも勧めています。そのほうが伸びる場合もあります。自分なりの始末というより、他力になってしまいますが。やはりなかなか現実は漫画のようにはいきません。

とはいえ、「殺す技術を教えることが、一人一人の持っている才能を最大化する」について、ここまではっきりと言い切った漫画はかつてなかった。これは確かです。

甲野善紀(こうの・よしのり) 1949年生まれ。日本古来の武術の身体操法を古伝書と実技の両面から実践的に研究。

甲野 「殺す技を学ぶことが生きる力を高める」と聞いても、「そんな怖いことはできない」「野蛮だ」という人がいると思いますが、その人にしても体内の白血球は常にいろいろな細菌と戦っているわけです。

生物は常に環境に対応して生きていますが、対応するという中には戦うことも含まれているわけで、そういう意味で言えば、武術というのは好き嫌いの問題を超えて、自覚していなくても生きていることと密接に関わっているわけであり、どんな人も無関係ではいられません。