あなたの老親は大丈夫か?
急増する格安「無届け老人ホーム」の悲惨な実態

安さと引き換えに奪われるもの
〔photo〕iStock

自治体への届け出を怠ったまま、高齢者を入居させて介護などを提供する「無届け施設」が急増中だ。共同通信はこのほど、全国に少なくとも約1万5000人が入居している実態があると報道した。

食費込み月10万円以下で入れる格安施設も多い。ところが、そこには思わぬリスクが潜んでいることをご存じだろうか。

プライバシー皆無の「すし詰め」状態

東京都内にある住宅街の一角。築30年以上とおぼしき民家に、寝たきりの高齢者7人が共同で暮らす。部屋を仕切る襖がとっぱらわれ、所狭しとベッドが並ぶ。隣人の目を遮るカーテンもないなか、介護職員が入居者のオムツを交換したり、身体をタオルで拭いたりしている。プライバシーは皆無に等しい。

ここは一昨年、都が「無届け」と認めた施設の一つだ。

高齢者を入居させて食事や介護などを提供する事業者は、都道府県等への届け出が義務づけられているが、住み手のいなくなった空き家やアパートなどの部屋を借り上げ、届け出を怠ったまま運営する例が後を絶たない。厚生労働省の調べによると、今年1月末時点で全国に1650ヵ所。2014年10月末時点の961ヵ所から1.7倍にも急増している。

「狭い空間に、高齢者が〝すし詰め〟のような状態でいるところもあります」

こう話すのは、昨年度、100ヵ所の無届け施設があった北海道旭川市の担当者(介護高齢課)。北海道は全国でもっとも無届け施設が多い地域だが、それには特殊な事情もあるという。

「冬場は除雪が必要となり、買い物も困難になるので、もともと施設への住み替えニーズが高い。核家族化も進んでいるので、ひとり暮らしの高齢者向けに『グループハウス』や『高齢者下宿』などと称して食事や介護を提供する事業者の参入が相次いでいる」

ほかにも理由がある。かつて北海道が一手に無届け施設の指導を担っていた頃、高齢者以外を入居させる場合は「有料老人ホームに該当しない(非該当施設)」と形式的に定義していたため、実態は高齢者向けでも、「年齢を問わずに入居できます」と謳って届け出を免れる施設が急増した。

ところがその後、厚生労働省が「たとえ高齢者が一人でも、食事や介護などを提供している場合は有料老人ホームとして扱う」という判断基準を示したことから、それまで道内で野放しにされていた無届け施設が一気に表面化したのだ。昨年度、250ヵ所の無届け施設があった札幌市も同じ事情を抱える。