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天才中学生を狙え!激化する甲子園常連校「スーパー青田買い」の実態

彼らの未来は14歳で決まる
週刊現代 プロフィール

チームの野球スタイルはその子にあっているか。進路の相談に親身になって乗ってくれるか。通常、公式戦が終了する3年生の夏まで、どの学校から誘われているか、シニアから教えてもらえませんが、ウチの子は中2の段階で3校誘いがきたそうなので、シニアの監督の配慮で、考える時間をいただきました。

そこからは情報戦でした。同級生の有力選手がどの高校を希望しているのか。優秀な先輩がどの学校に進学したか。今は子供同士のLINEのつながり、専用のサイトですべて画面上で把握できてしまう。でも、最終的にウチは『縁』を大事にしました。最初に声をかけていただき、監督さんが観に来た試合で、息子がたまたま活躍した。甲子園で息子の姿を見たときはジーンときました。

弟が甲子園に行けたのは、上の子が甲子園に行けず、厳しさを痛感したからです。ただ一生懸命やるだけでは目標に到達できない。甲子園出場、という目標を達成するために、ゴールから逆算して考える大切さを学びました。だから弟は、上の子とは違うシニアを選んだのです」

イチかバチかの賭け

一方、同じく甲子園を目指してこの春に高校に入学したばかりで厳しい決断を迫られる生徒もいる。その父親(49歳)が複雑な心境を吐露した。

「甲子園優勝経験を持つ近畿圏の名門高校を志望しましたが、そこまでの実力はなく、関東の他の強豪校に推薦で入学しました。しかし入学直後にけがをしてしまった。そのことを学校で責められたことにショックを受けたのか今、息子は悩んでいて、学校を休んでいます。万が一、野球部を辞めたら、学校も辞めないといけないでしょう。

私は、決して野球部や学校が悪いとは思っていません。めぐりあわせの悪さが重なり、歯車が狂ってしまった。学校選びは、イチかバチかの賭けみたいなところはあると痛感しています」

ヤクルト・荒木大輔や日本ハム・武田一浩などプロ野球で活躍したOBを多数輩出し、早実・清宮も指導した、調布シニアの安羅岡一樹監督が明かす。

「好きではじめた野球ですから、できればみんな花開いてほしい。でも、実際は野球だけで生活できる人は数えるほどしかいない。ですから、私は野球をやめて社会人になったときに困らないよう、人への思いやりやチームワークとは何かを学んでほしい、と考えてずっと指導してきました。

それは清宮に対しても変わりません。バッティングに関して口を挟んだことはほとんどありませんが、団体行動を乱すような行動をとったときは、厳しく叱りました。彼は中2の冬から半年間、腰を痛めて野球ができない期間がありました。

実力的にはズバ抜けていたけど、グラウンド以外の場所でリハビリをすることは許さなかった。グラウンド脇でリハビリに励み、その姿を仲間がどう見ているか。言葉を交わさないやりとりが、信頼感、チームワークにつながる。彼には、そのことを一番、感じてほしかったんです」

まだ少年なのにプロ並みの球を投げ、快音を飛ばす「怪物の卵」たち。聖地・甲子園で高校球児がつむぐ物語は、人生を賭けて白球を追う中学生世代に、ヒントが隠されている。

「週刊現代」2016年5月7日・14日合併号より