伝説の編集者による偏愛的読書談義「文字を声に出して、身体を震わせる意味を見直してみたい」
第13回ゲスト:松岡正剛さん(前編)
〔写真〕峯竜也 〔構成〕小野塚久男 〔撮影協力〕編集工学研究所
大人の遊びを知り尽くした伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“男の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。第13回目となる今回は、編集工学研究所所長・松岡正剛さんをお迎えし、活字フェチ同士による偏愛的読書談義を繰り広げる――。

読書遍歴を披露して、あの松岡正剛氏から一本!

島地 おい、日野! これ、重いからちょっと持ってくれ。

日野 うわ、重っ! 本ですよね、これは。今回は松岡正剛さんがゲストですから、まともな読書談義で盛り上がりそうな予感がしますが、いったい何を持って来たのやら。

島地 まかせておけ。実際のところ、今日は、松岡さんとお会いするのを本当に楽しみにしていたんですよ。

松岡 わたしもです。島地さんの特異なキャラクターがどうやって構築されたのか、引き出してみたいと思っていました。

島地 松岡さんの膨大な蔵書を前にして僭越ですが、わたしがどうしてこれほど本の世界に淫したか、読書遍歴の一端をお話しさせてください。まず強烈に印象に残っているのは、小学5年生で読んだ「アルセーヌ・ルパン」シリーズです。

松岡 当時の翻訳者はというと……。

島地 子供向けのシリーズもあったんですが、わたしが読んだのは保篠龍緒が翻訳した大人向けのもので、いわゆる「保篠流」と呼ばれる名調子。もう夢中になって読み耽りました。

松岡 え! 保篠ルパンですか、それはすごい。わたしは堀口大學訳からだったので、うらやましいというか、ちょっと悔しい。

島地 やったぞ、日野。松岡さんから一本とったぞ!

日野 最初からあんまり飛ばさないほうがいいですよ。でも確かに、ルパンといえば堀口大學訳という印象が、自分のなかにもあります。

松岡 保篠さんの翻訳は格調高いというか、島地さんがいうように名調子で、「ルパンといえば保篠訳」という時代も長かったんですよね。今は残念ながら入手困難になっていますが。