韓国政治が落ちた「罠」〜総選挙「与党大敗」、政権はもはや意思決定力を失った
ゼロからわかる徹底解説
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文/木村幹(神戸大学大学院教授)

与党勝利は確実視されていたが……

4月13日に投票、即日開票された韓国の国会議員選挙は何重もの意味で、奇妙な選挙だった。

最初に選挙結果が奇妙だった。選挙直前のあらゆる世論調査において、与党セヌリ党が野党を大きくリードしており、どう転んでも与党の過半数議席維持は動かないものと予想されていた。

そもそも、本来なら与党最大のライバルになるはずであった最大野党「新政治民主連合」は昨年12月、この選挙における候補者選びを理由の一つとして「共に民主党」と「国民の党」の二つに分裂し、両者は選挙直前の候補者調整にも失敗していた。

結果、全300議席のうち257議席に野党2党の候補者が乱立し、ただでさえ少ない野党支持票を分け合わざるを得なくなる、とみられていた。与党の背後に控える朴槿恵政権自体もまた、任期4年目の韓国大統領としては異例の高支持率を誇っており、その勝利は疑いないものと思われた。

にもかかわらず――ふたを開けてみて明らかになったのは、与党セヌリ党の大敗、しかも前回選挙時に得た過半数を失ったのみならず、最大野党「共に民主党」にさえ後塵を拝する第二党への転落(ただし、選挙後、無所属当選者から復党者が出たことで、セヌリ党が第一党になることは確実視されている)という結果だった。

さらに奇妙だったのは、このような国会議員選挙の結果が必ずしも、この選挙で政権発足から3年余りを経た朴槿恵政権の施策が真剣な議論の対象とされ、国民から手ひどく批判された帰結でさえなかったことだった。

実際、選挙直前から選挙期間中、韓国のメディアはこの選挙における具体的な政策的争点について、重点を置いて報じなかった。代わりに、与野党双方の候補者選びをめぐる混乱を連日のように報じ、メディアは与野党の指導部を厳しく批判した。

事実、与党セヌリ党と最大野党「共に民主党」がこの選挙における前候補者を確定できたのは、選挙における候補者登録のわずか数日前であり、当然、その選挙運動も混乱に満ちたものだった。