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ある日、突然捨てられる会社~ユニクロ、マックの失敗は他人事ではありません

人は飽きる——その事実から逃れられる経営者はいない
業績不振に悩むマユニクロの柳井会長〔PHOTO〕gettyimages

あんなに光り輝いていたブランドも、消費者の信頼を失うのは一瞬だった。デフレ下で大成功を収めた企業ほど、現在、苦境に喘いでいる。彼らはどこで何を間違ったのか。ビジネスの潮目が変わった。

純利益が半減した!

東京近郊にあるユニクロの中型店舗の店長(20代)の悩みは深い。

「かつては平日でも開店前から行列ができていたと聞いたことがありますが、最近では年末のセール以外、そんな光景はありません。都心の大型店は立地も良く、外国人観光客が『爆買い』していくのでしょうが、郊外店は極めて厳しい。

とにかく新商品が売れなくなりました。最近は有名人とコラボしたTシャツやジョガーパンツ(裾をしぼったズボン)に力を入れているのですが、動きは良くありません。たとえ売れなくても、新商品はどんどん追加されるため、在庫が積み上がる。売り上げを保つために従来品を値下げせざるを得なくなります。そうなると値下げした商品しか売れず、新商品はますます売れない。まったくの悪循環です」

ユニクロの業績が急激に悪化している。かつてはフリースやヒートテック、ブラトップやウルトラライトダウンなど、次々とヒット商品を投入し、アパレル業界で一人勝ちを続けてきた。が、今期は業績が暗転。ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは'16年2月中間期連結決算で、純利益が前年同期比55%と急減したことを発表し、8月通期決算でも2期ぶりの最終減益となる見通しだ。

まず要因として挙げられるのは、度重なる商品価格の引き上げだ。

「アベノミクスが始まって以降、デフレ脱却の可能性が出たことで、ユニクロは'14年に5%、'15年に10%の値上げを断行し、これが災いしました。ユニクロがこれまで売れてきたのは、安い割に機能性が高かったからです。たとえ価格以上に品質が良くても、安くないユニクロの商品を欲しいと思う消費者は多くないということです」(流通小売り専門の証券アナリスト・佐々木加奈氏)

もちろん、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も、このことは百も承知だ。決算発表の場で柳井会長は、「より買いやすい値段にしたい」と発言し、商品の値下げを示唆した。だが、価格を下げれば消費者が戻ってくる、というほど単純な話ではない。

ユニクロの不振には値上げよりも重大な要因がある。それは、ユニクロというブランド自体が消費者から「飽きられた」という事実だ。いったいなぜなのか。

流通業界の専門誌『2020Value Creator』編集長の田口香世氏は、商品から革新性が失われたことを理由に挙げる。

「たとえばユニクロのヒートテックは、これまで女性に『ババシャツ』と呼ばれていた肌着を、おしゃれで機能的な商品に革新しました。素材も東レと一から開発し、それまでにない製品を生み出した。ところが、最近はそういうイノベーションがなくなっています。

ヒートテックもフリースも多くの人はすでに持っています。品質がいいため、頻繁に買い換える必要もありません。新しい商品が出たときは、『十人一色』で、みんなと同じ物でも多くの人が欲しがります。しかし、その商品が行き渡ると消費者の好みは『十人十色』になり、みんなと同じ物はもう欲しくなくなってしまうのです」

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