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本当にあったウソのような「非常識な判決」10選
世間知らずエリートが頭だけで考えると…
〔PHOTO〕gettyimages

難関の司法試験を突破した裁判官は、法廷の高い位置に座り続けると、無意識に「権力を持っている」と勘違いをしがち。どうして不可解な判決が頻発するのか、現役弁護士に解説してもらった。

「二人で青い鳥を探して」

対向車線からはみ出してきた車にぶつけられ、「もらい事故」にもかかわらず、ぶつけられた側が賠償責任を負った……。

約1年前、福井地裁が下した判決だ。このような、一般人の常識や道徳観念からずれた判決が増えている現状に警鐘を鳴らしたいと、セントラル法律事務所の代表弁護士・間川清氏は『裁判官・非常識な判決48選』(幻冬舎)を上梓した。間川氏は損害賠償事件などを中心に、多いときは年間200件以上の弁護士業務を担当する。

司法試験をパスしたエリート裁判官は勉強はできるのだろうが、ちょっと世間とズレてしまっている。間川氏にその代表例を紹介してもらった。

(1)「離婚なんかしないで二人で青い鳥を探して」

被告の夫は原告の妻に対し、気を失うまで殴り、育児もほとんどせず、妻をいじめてきた。夫は妻の主張を否定し、自営業の仕事に打ちこみ、家族のために人生を捧げてきた、と反論する。

そんな夫と結婚生活を続けることはできない、とした妻が29年間ともに歩んできた夫に、離婚を求めた裁判で、次のような判決が下された。

〈被告である夫に至らない点があったことは否定できない。しかし、今なお原告との結婚生活は継続可能と考えられるから、原告と被告、殊に被告に対して最後の機会を与え、二人でどこを探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うよう、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、本訴離婚の請求を棄却する次第である〉(1991年9月20日、名古屋地裁岡崎支部)

裁判所は離婚の請求を棄却し、今後も結婚生活を続けることを求めたが、その結論に至る理由として、おとぎ話に出てきそうな判決文で理由づけしている。

「『青い鳥判決』は法律家の間で超有名です。今回取り上げた判決の中でも、一番非常識な判決だと思う。改めて判決文を読み直しましたが、完全に裁判官が自分の価値観に酔いしれてしまっています」(間川氏)