シノドス編集長・荻上チキさんが「人生の節目で影響をうけた本」
10冊の選者、「シノドス」編集長の荻上チキさん

受験生には参考書、社会人には思考力を鍛える一冊として

高校時代によく読んでいたのは、筒井康隆と星新一。SF的な感性や風刺の鋭さに影響を受けましたが、『俗物図鑑』と『ボッコちゃん』の2冊はとくに、社会を戯画化していて今読んでも面白いということで挙げました。

たとえば、『ボッコちゃん』に収められた一篇「おーい でてこーい」は、ある村で台風後に発見された大きな穴をめぐる話。都会の住人が、あらゆるものを穴に捨てはじめる。今では原発問題を重ねて読む人もいるでしょうが、いつの時代にも共感される普遍性が、今でも広く支持されている理由なのだと思います。

以下、順位は考えずに「人生の節目で影響を受けた本」を選びました。

教養としての大学受験国語』の著者、石原千秋先生は成城大学での恩師で、石原先生の演習を受ける前に読みました。

受験生にとってはよい参考書になるでしょうが、大学生や社会人の読者にも「受験のために読んだテキストにはこういう意味が込められているんだよ」という種明かしになっているのが面白い。

出題されるテキストは上野千鶴子、鷲田清一など。現代思想や社会科学の知識が身につくとともに、私にとっては文章の書き方のヒントにもなりました。

次の『ブエノス・ディアス、ニッポン』の著者、「ななころびやおき」さんは弁護士で、不法滞在で退去強制されようとしている外国人から依頼を受けることが多いそうで、本書は著者が関わったケースを紹介したものです。

騙されて日本で売春をさせられている身寄りのない少女や、子供に重い障害があり強制送還されると生きていけないと嘆く母親。著者はそういう人たちの弁護人として奔走する。声高に問題を論じるというよりも、見ようとしないと見えない隙間を紹介しています。