この国に静かに忍び寄る「団塊世代の貧困」という大問題
まず現実を直視したい

年金だけでは生活ができず、預金を食いつぶす老人たち。職を得られず、バイトで得たわずかなおカネで日々をやり繰りする若者たち……。いつからこの国は、長寿を喜べず、明るい未来を望めない国になってしまったのか。

若者の貧困に焦点を当てた『貧困世代』の著者・藤田孝典氏と、NHKスペシャル『老人漂流社会』のキャスターで、『老後親子破産』の共著者である鎌田靖氏。貧困問題を取材し続け、目に見えない貧困を可視化してきた二人が、日本が抱える大問題について語り合った。

1円玉しか残っていない

藤田 ここ数年、NHKは『ワーキングプア』や『無縁社会』、『老後破産』など、貧困をテーマにした番組制作に力を入れていますね。

『老後破産』のなかでは、月に一回、近くの大学の食堂で定食を食べることだけが楽しみだと話す一人暮らしのお年寄りの話が紹介されたり、年金支給日の直前になると、1円玉しかおカネが残っていないという方の様子が映されたりと、視聴者に「高齢者の貧困はここまで深刻化しているのか」と衝撃を与えました。

新たな貧困を次々と掘り起こし、問題提起をしてこられましたが、今度は団塊世代の貧困をテーマにした番組を放送予定と伺っています(4月16日よる9時総合テレビ放送 シリーズ老人漂流社会『団塊世代 忍び寄る"老後破産"』)。この世代に焦点を当てた理由はなんでしょうか。

鎌田 昨年の夏ごろに、貧困に苦しむ親子をテーマにした『老後親子破産』を放送したのですが、その取材の過程で、日本の屋台骨を支えてきた団塊世代にも貧困のリスクが忍び寄っていることが分かったんです。そこで、対象を団塊世代に絞って取材を進めることにしました。

いわゆる団塊世代の人口は、およそ1千万人。彼らは時として「逃げ切り世代」などと皮肉られることからも分かる通り、十分な退職金をもらい、年金ももらえるから、安定した老後を送れると思われてきた。

ところが、バブル崩壊以降退職金は減少傾向で、年金システムも不安定化している。親は介護が必要で、かつ子供が非正規雇用というケースも珍しくありません。

鎌田氏(左)と藤田氏

実際、民間シンクタンクの分析によれば、年金だけで暮らす団塊世代の預金残高は、年間90万円ほど目減りし続けている、とのことです。貯蓄が100万円程度しかないという方も20数%いる、というデータもあります。つまり、彼らの多くが「破産予備軍」なんです。

この問題にフタをしたまま、たとえば10年経ったら日本はどうなってしまうのか。不安を煽ることが目的ではありません。まずは番組を通じて、この現実を直視していただきたいのです。

取り返しのつかない事態になる前に、警鐘を鳴らそう――そういう思いで、番組制作に臨みました。