「冤罪」はなぜ起こるのか? 司法が抱える問題点を鋭く、話題のミステリー小説『真実の檻』
著者・下村敦史さんにインタビュー
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冤罪に巻き込まれるリスクは誰にでもある

大学生の石黒洋平は、亡くなった母親の遺品を整理していた折、自分の「本当の父親」が〈赤嶺事件〉と呼ばれる殺人事件を起こした死刑囚であることを知る。しかし、事実を受け入れられない洋平は、事件が冤罪であり、父は無実だと信じて真相を探り始める……。このたび刊行された『真実の檻』は「司法の闇」をテーマとしたミステリーです。

僕はデビュー前から、裁判員裁判を題材とするミステリーを書くなど、司法の問題には関心を抱いていました。この作品については、冤罪事件ばかりを追うフリージャーナリストが不審死したという実話にヒントを得て、小説誌の連載短編として書いたものです。単行本化するにあたって改稿し、今の形になりました。

洋平は赤嶺事件を追う過程で痴漢や覚せい剤使用事件、毒物混入事件など冤罪の疑いのある事件に次々と遭遇します。

作品を書くにあたって様々な資料を読みましたが、誰でも冤罪事件に巻き込まれる恐れがあると痛感しました。特に男性であれば、痴漢の冤罪には注意が必要でしょう。僕自身、電車に乗るときは、どこに立つとか、手はどこの位置に置くとか、気にしてしまいます。

冤罪が生まれる背景として、本作では司法の抱える問題点が描かれます。洋平の父に死刑を求刑した検察官であり、現在は弁護士に転じて赤嶺事件の真相解明に取り組む柳本は、「無罪とは検察官にとって最大級の悪夢だ」と検事たちの「本音」を漏らします。

僕自身は、ほとんどの事件は適正に捜査が尽くされて起訴されるものだと思っています。ただ、日本の刑事事件の一審での有罪率は99・9%と極めて高いですから、現場の検察官が「有罪率を落としてはいけない」とプレッシャーに感じることも事実でしょう。

一方で海外の場合、たとえばアメリカなどは、起訴されても無罪になる確率が高い。しかしこれも、裏を返せば証拠不十分で起訴しているだけじゃないかという疑念が浮かぶ。有罪率が高すぎるから冤罪事件の疑いがあるとも言い切れないと思います。