「トンデモ農政」がこの国を滅ぼす~世界と逆行する「食品」値上がりのカラクリ
泣くのは結局、消費者です
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TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の国会審議が始まった。TPPには、「米国の言いなりになった亡国の条約だ」と批判する声も少なくない。元々はTPPに賛成の議員が多い民進党も、こうした批判を気にして、TPPに反対かのようなイメージづくりに余念がない。民進党の反対理由は、TPPは農業の重要5品目の聖域確保を目指す国会決議に違反するから、という取ってつけた内容だ。

事ほど左様に、日本の農政はまともな政策議論がのぞめる状況からは程遠い。

例えば、日本の農業の「聖域」の一つであるコメ。このコラムでも以前('13年12月14日号)取り上げたが、安倍政権の進める農政は、「コメを輸出産業に」という掛け声とは正反対の方向に向かっている。日本のコメは、価格は高いがおいしいと言われる。しかし、コメの国内消費量は年々減少し、生産も減っている。産業としてはじり貧だ。

これを輸出産業として発展させるには、第一に価格を下げて競争力を高める。第二に品質を上げて付加価値を高め、海外のコメ農家の追い上げに対抗する。第三に十分な輸出量を確保するために生産量を増やす。以上の3点が重要だ。

安倍政権は、'18年度に減反政策を廃止すると発表したにもかかわらず、一方で、今夏の参議院選挙対策として、米価を何としても上げろという厳命を下した。農水省はこれを受けて、農家に主食用のコメを作らせないようにするため、飼料用米への補助金を大幅に増やした。

さらに、農水省の幹部が各地を行脚して、減反を徹底させ、'15年、史上初めて減反目標を達成してしまった。その「おかげ」で、コメの価格は去年よりも上がった。しかし、値上がりで消費者のコメ離れが進み、今年のコメ需要は例年の倍のペースで落ち込むと見られている。

現行の政策は、価格を上げる、そのために付加価値の低い飼料用米にシフトさせ、生産量も下げる。前述したコメの輸出産業化に必要な3点すべてに逆行する「トンデモ農政」だ。

もう一つ。年中行事の感が強くなった年末のバター不足騒動。昨年の5月下旬、こんな報道があった。「('14年)12月にスーパーなどに置いてあるバターが少なくなった。'15年度もバターが7100t足りなくなりそうだ。このため、農林水産省はバターの輸入を1万t増やすことにした」

しかし、結果はご存知の通り、昨年末には再びバターがスーパーの店頭から消えた。今年もまったく同じことが繰り返されている。今年1月農水省は'16年度のバター輸入を7000tと決めた。乳業団体の'16年度のバター不足量見通しは8200t。輸入しても1200t足りない。常に不足気味にして価格が下がらないようにしているのだ。

一方、世界中で乳製品価格は暴落している。バターの輸入を国家貿易の対象にしている先進国など聞いたことがない。もちろん、農水官僚と族議員の利権のためだ。

こうした「亡国の農政」の抜本改革をしなければ、日本の農業は確実に、衰退への道を歩むだろう。そして、消費者は常に高い農産物を押し付けられて莫大な犠牲を払い続けるのだ。

『週刊現代』2016年4月23日号より