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発行部数を「水増し」してきた朝日新聞、激震! 業界「最大のタブー」についに公取のメスが入った
〔photo〕iStock

文/幸田泉(作家)

新聞業界「最大のタブー」

今年に入り、大幅な賃金カットを盛り込んだ中期経営計画に社内が揺れている朝日新聞社だが、ここへ来てさらなる「難題」が浮上した。

新聞発行本社が販売店に余分な新聞を買わせる「押し紙」をめぐり、3月末、実は朝日新聞社は、公正取引委員会から「注意」を受けていたのだ。

押し紙は、独占禁止法の特殊指定で明確に禁止されているにもかかわらず、新聞業界では長年にわたり行われてきた。新聞業界「最大のタブー」と言われる押し紙問題に公正取引委員会が踏み込むのは異例のことで、朝日新聞社が今後どのような販売政策を実行していくのか、業界の先例として注目に値する。

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朝日新聞社広報部によれば、公正取引委員会から注意を受けたのは、販売担当の営業社員と販売店との数年前のやりとりに関してのこと。販売店が「新聞の注文部数を減らしたい」と申し入れをしたにもかかわらず、営業社員は再考を促し、こうした中で「営業活動としてやや行き過ぎた言動があった」と公正取引委員会より指摘されたという。

公正取引委員会の注意とは、違法行為を認定したわけではなく「違反につながる恐れがあるので注意しなさい」という程度のものであるが、朝日新聞社は「真摯に受け止めている」(広報部)としている。

そもそも新聞社は販売店からの「注文部数」の新聞を配送しているが、販売店は必要部数を超えて押し紙も含めた部数を注文するのが業界の慣例である。販売店は押し紙の負担で経営が苦しくなると、注文部数を減らして必要部数に近づけたくなるのは当たり前のことで、朝日新聞の一件もそういうケースだったと思われる。

無料のネットニュースの普及などで新聞の読者離れが進み、販売店収入は減少傾向が止まらない。「押し紙を切れ(押し紙を減らせ)」と迫る販売店と、それを阻止しようとする新聞社との綱引きは各地で起こっている。

実際、ある全国紙では昨年、地域の販売店が集団となって一斉に注文部数を減らすという事態が発生し、本社の販売担当社員が呼び集められ対応に追われた。新聞社と販売店はメーカーと下請け企業のような取引先というよりも、車の両輪のような立場で新聞の普及を進めてきた歴史がある。

このような関係性の中で、押し紙をめぐる販売店と新聞社の対立が頻発し、朝日新聞のように公正取引委員会に申告する販売店まで出て来たというのは、ぶくぶくに水膨れさせた偽りの発行部数を維持する新聞社の「押し紙政策」がそろそろ限界を迎えている証左といえるだろう。