天才パイプ作家ヨーン・ミッケの娘が、浅草の老舗喫煙具メーカーにやってきたのはなぜか?
島地勝彦×柘恭三郎&マレーネ・ミッケ【第1回】

撮影:立木義浩

<店主前曰>
珍しくサロン・ド・シマジ本店に若い長身の金髪美女がやってきた。本能的に巨匠立木義浩の目が輝いたのをわたしは見逃さなかった。

エスコートしてきた紳士は、浅草にある老舗喫煙具メーカー柘製作所の4代目社長、柘恭三郎さんである。「TSUGE」ブランドのパイプは、いまや世界中で大人気を博している。

そして金髪の美女は、いまは亡き天才パイプ作家ヨーン・ミッケのお嬢さまである。名前は、マレーネ・ミッケという。遙々デンマークから日本にきているワケは、自身もパイプ職人になろうと決意し、柘製作所に住み込んで一から技術を学ぶためだそうだ。

柘社長いわく「やはりお父上の血が流れているのでしょう。筋がいいです。ちょっとしたスケッチをみてもセンスがいいんですよ」。

彼女が作ったパイプが「マレーネ・ミッケ」の名前で市場に出る日は近い。わたしもすでに予約を入れている。

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マレーネ あら、ここに父のパイプがある。これは父の作品ですよね。

 シマジさんの愛用のパイプで、もちろん、お父さまの作品です。何年の製作だろう?

マレーネ ええっと、これは凄い! 1990年のOWN(オウン)だわ。

シマジ 「OWN」とサインしているのは、売らずに自分で使おうと思った作品ですよね。それでもミッケファンは欲しくて欲しくて仕方ないから、泣く泣く売るわけですが。

 今日はここでお見せしようと思って3本のミッケを持ってきました。

シマジ ほほう、これは凄い。一度も火が通ってない新品ですね。

 これはうちの会社のコレクションの一部です。ご存じのようにこれが“金魚”の名で一世を風靡したスタイルで、1974年の作です。みるからにミッケでしょう。美しいですよね。

シマジ うん、まさに芸術品ですね。

 こちらは「ゼブラ」です。ミッケは「われながら凄い!」と思うパイプが完成したとき、このゼブラの刻印を押していたんです。

シマジ うん、さすがに優美ですね。