なぜ北方領土問題はいまだ解決しないのか~日露関係を動かす「4つの提案」をここに示そう

岩下 明裕
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ボーダースタディーズから日露関係をみる

領土問題は解決しないが、経済的にも戦略的にものりしろがある。では、このようなロシアとの関係をどう再構築したらいいのだろう。明らかなことは、大所高所からのアプローチは壁にぶつかっているということだ。急がば回れ。まず人的交流を拡大し、地域と地域の関係を深めることからはじめるしかないだろう。

私がここ10年取り組んでいるボーダースタディーズ(境界研究、国境学)は、国家と国家の関係が袋小路に陥ったときには、様々なチャンネルを用いて、国家の壁をすり抜け、あるいは穴をあけて関係を変えようと実践をも指向する学問領域である。

例えば、根室・納沙布岬からみえる貝殻島でのコンブ漁協定や北方領土12カイリ内の日本漁船による安全操業協定、そしてパスポート・ビザなし協定。前者は極めて限定した海域でロシアの管轄権を認めるか、あるいは管轄権に立ち入らないかたちで地元に漁猟の道を切り開き、後者は元島民や関係者にパスポートなしであたかも日本の領域の延長のようなかたちで島に入ることを可能とした。

国家関係が膠着して、地域や住民の利益を考慮して導入された画期的な施策だ、と私たちは評価する。

現在の日露関係を動かすにはよりダイナミックな政策がほしい。私の提案は4つある。

第1に日露間でビザ免除協定を導入すること。前述のビザなしがあくまで特殊なケースであり、対象者も限られ、パスポート不要とされるのに対し、こちらは国民すべてに適用されるだけでなく、正規の国家関係における措置である。

日本政府は韓国やタイ、マレーシアなど東南アジア諸国にこれを導入する一方で、ロシアに対しては消極的な対応を変えていない。対照的にロシアはタイや韓国と昨今、ビザ相互免除を行い、交流人口を増やしており、日本とのそれも強く望んでいる。

外務省関係者になぜ導入しないのか尋ねると「警察が反対する」。警察関係者に尋ねると「外務省は我々を口実にする」という。治安問題などを担当する機関が消極的な点は理解できるが、ここは大局的な観点からハードルを乗り越えてほしいものだ。

中国人へのビザ緩和が段階的に進んでいるのと比べれば、なぜロシア人にもこれを適用しないのか説得的な理由はみつけられない。「観光立国日本」という政策のなかでもそろそろ重い腰をあげるときだろう。

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