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佐藤優が直伝!旧日本陸軍に学ぶ「出世の秘訣」
社会人のための「役に立つ教養」講座
日本人の深層心理は今も昔も変わらない〔PHOTO〕gettyimages

中間管理職の心得

皆さんは『作戦要務令』という書物をご存知でしょうか。これは旧日本陸軍が、第二次世界大戦に突入する前の1938年に作ったマニュアルです。

今から80年近く前に書かれたものですが、実はこのマニュアルには、日本人が作る「組織」の本質が記されている。ですから、これを前回紹介したような「アレゴリー」、つまり現在の企業組織の「寓話」として読めば、ビジネスにも役立つと私は考えています。軍隊と企業は、本質的にとても似通っているのです。

旧日本軍の評価において、「陸軍は海軍に比べて劣っていた」という考え方が支配的です。しかし私は、陸軍は過小評価されていると思います。

当時、陸軍は「これからの戦争は総力戦になる。だから、気合や精神力で勝つことはできない」と冷静に分析していた。日露戦争で、日本兵は無防備にロシア軍の機関銃の前に突撃していきました。これと同じことをしていては、絶対に勝てません。兵器がハイテク化しているのだから、組織運営も合理化しなければならないと考えて、『作戦要務令』というマニュアルをまとめたわけです。

『作戦要務令』は、参謀本部に勤めているような超エリート将校ではなく、中隊長や小隊長などのいわば「中間管理職」に向けたものです。中身を見てみると、こんなことが書いてあります。

〈指揮の基礎をなすものは実に指揮官の決心なり。故に指揮官の決心は堅確にして常に強固なる意志をもってこれを遂行せざるべからず。決心動揺すれば指揮自ずから錯乱し部下したがいて遅疑す〉

リーダーシップの基礎は指揮官、つまり上司の決断力にある。だから、いったん決断したら動揺してはいけない。上司が動揺すれば、部下は「この人に従っていて大丈夫だろうか」と疑念を抱き、組織は混乱してしまう。そう戒めているのです。