アメリカ大統領候補、抜群の「選曲センス」を見せるのはこの人だ!
歌は世につれ、世は歌につれ
サンダース候補の選挙キャンペーンにはプロのDJを帯同している〔photo〕gettyimages

アメリカ大統領選とキャンペーン・ソングの「切っても切れない」関係をえぐる短期集中連載。第3回目となる今回は、2016年の大統領候補の中で誰が一番選曲センスがいいのかを考えよう。 

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選曲センス抜群のサンダース

選曲センスということだけで見るならば、2016年度の選挙戦のトップは、間違いなく民主党のバーニー・サンダース上院議員だ。社会主義的主張を続ける異色の候補ながら、民主党の二番手につけている彼は、キャンペーン・ソングもじつにユニークだ。

2016年予備選の皮切りであり緒戦の山場となる場所のひとつ、アイオワ州の党員集会のCM映像で、サンダースはサイモン&ガーファンクルの「アメリカ」(1968年)を使用した。これは「技あり」の選曲だった、と言うしかない。新鮮な手触りのする一曲であり、同時にサンダースの主張する「あるべきアメリカ」への道筋をも示すセレクションだったからだ。

「アメリカ」とは、こんな歌だ。

若い恋人ふたり、「僕」と「キャシー」は、アメリカのいろんなところを旅する。そのときに彼らが見るものと語る内容で歌詞は構成されている。歌のなかで繰り返されるフレーズは、僕は(or 僕らは or 彼らはみんな)「アメリカを探しにいったんだ」。

アメリカは目の前にあるのに、ではなぜ「探す」なんて言うのか? 答えは簡単だ。「目の前の現実が理想的ではないから」だ。本当の意味で素晴らしい「はずの」アメリカの真実を、旅をしながら探していたんだ……そんなストーリーが、スーパー8で撮られたショート・ムーヴィーのような、リリカルなタッチで描かれていく、アコースティック・ギターと二声ヴォーカルのハーモニーが美しいナンバーだ。

というわけで、ごく普通に考えると、これは決して、大統領選の「キャンペーン・ソング」には選ばれない一曲だろう。ナイーヴすぎる。テンダーすぎる。キャンペーン・ソングというと、もっと肉感的でないといかん! とするのが一般的傾向だろう。たとえば、軍隊のマーチのような。

騒々しくも楽天的で、ときに生臭いまでにエネルギッシュで……といった観点全部を逆手にとりつつ、しかしそれでも「アメリカにはまだ希望があるはずだ」と主張するなんて! と、ポップ音楽を知る人であればあるほど、この選曲には驚きと感嘆を禁じ得なかったはずだ。

そしてさらに、このアイオワの党員集会でのサンダースは、もうひとつの「大技」をやってのけてくれた。彼の演説が終り、万雷の拍手のなか立ち去っていくとき、その背後で鳴らされていたのが、デヴィッド・ボウイ「スターマン」(1972年)のサビ部分だったのだ!