アメリカ大統領選とポップ音楽の「因縁」〜そしてブルース・スプリングスティーンの怒りが爆発した!
Born in the U.S.A.事件からオバマ支持まで
2004年、反ブッシュ政治運動「Vote for Change」で共演するブルース・スプリングスティーン(右)とR.E.M.のマイケル・スタイプ〔photo〕gettyimages

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全米36都市、総勢27組による「選挙コンサート」

今回の選挙戦でのドナルド・トランプ候補の「炎上選曲」のターゲットとなったR.E.M.と、彼がこの「炎上選曲」を始めるきっかけとなった(と僕が考える)、ニール・ヤングがともに参加していた政治運動が、2004年の「ヴォート・フォー・チェンジ(Vote for Change。以下VFC)」だった。

今回はこの運動を振り返ることから始めよう。

2004年も大統領選の年だった。当時の大統領、共和党のジョージ・W・ブッシュの再選を阻止するため、おもに民主党支持者のポップ音楽家が立ち上がり、有権者に「投票に行こう」と呼びかけるためにおこなったのが、この運動だった。具体的には、錚々たる顔ぶれが集まって、全米の36都市をコンサート・ツアーするという大規模なものだった。

参加したアーティストの顔ぶれは、前述の二者以外では、まずベテラン勢ではジャクソン・ブラウン、ジェームス・テイラー、ジョン・フォガティら。(トランプがコンサートを観た)クロスビー、スティルス、ナッシュ・アンド・ヤングもいた。

ボニー・レイット、ピーター・フランプトン、ジョン・メレンキャンプもいれば、シェリル・クロウ、パール・ジャム、ベン・ハーパー、ジャック・ジョンソンといった、当時の中堅から若手もいた。

R&B界からはベイビーフェイス、ヒップホップ界からはジュラシック5、ブルースのケブ・モ。カントリー界からは、イラク戦争批判で女を上げたディキシー・チックス。そして、「ボス」ことブルース・スプリングスティーンが「盟友」Eストリート・バンドを率いて、ここに参戦した。

総勢27組、このすさまじいまでの豪華な面子が入れ替わり立ち代わり参加するコンサートは、11月2日の選挙日を睨んで、04年の9月末にスタートし、10月中旬まで続いた。そして公演は大成功をおさめた。1000万ドル以上の収益が上がったという。

しかし、この年の選挙で民主党は負ける。同党の候補者だったジョン・ケリー上院議員は、大激戦の末、現職のブッシュ大統領に僅差で敗れることになる。

そして分析の結果、「VFC」ツアーが訪れた都市において、とくに民主党にプラスとはならなかった、ということが判明する。ツアー前の世論調査と、実際の投票行動の内容に、有為な変化は見られなかったということだ。