一般教養としての「企業分析」
〜いい会社/悪い会社はこう見分けよ!

東大「最強ゼミ」が明かす
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幸せに働ける「いい会社」「悪い会社」をどのように見つければよいのか?

実在する「Tゼミ」(瀧本哲史京都大学客員准教授が顧問)をモデルにした、東大本郷キャンパスに部室をおく「秘密結社」、東大ブラック企業探偵団。「Tゼミ」は、公開情報に基づく企業分析と政策分析を通じ、過酷な現代社会を生き抜くための意思決定方法を学び実践するゼミ

問題企業や業界を徹底分析し、その実態に迫ってきた日本最強の「Tゼミ」企業分析ノートのノベライズ隠れたブラック企業を摘発、眠れるホワイト企業を見つけ出す――。

プロローグ

昇ったばかりの朝陽が、繁華街のはずれに立つテナントビルを照らしはじめた。その4階へと続く外階段を上り、さきほどまで従業員が後片付けの仕事に追われていた居酒屋「ワイワイ」の非常口から入っていく女の影があった。

女の名前は羽入マオ。1週間前からここでバイトを始めた東大生だ。あたりに注意を払いながら店内に入ったマオは、レジの下にある、売上管理用の書類や勤怠表の束が入った引き出しを開けた。

書類の束を脇に寄せると、引き出しの底の奥に、指が入るくらいの穴が開いている。そこを引っ張ると底板は持ち上がり、下から1冊の分厚い日誌が現れた。表紙には「成長管理日誌」の文字。

(とうとう、見つけたわ……)

表紙をめくって、マオは背筋が凍る思いがした。

「私は無能です私は無能です私は無能です……」と、ページいっぱい小さな文字で埋め尽くされているのだ。

さらにページをめくると、衝撃的な文章が次々と目に飛びこんできた。「自分の力不足で月次の売上目標に達しなかったため、自腹を切って償いました。申し訳ありません」。「学生バイトさんがいっぺんに2人も休んでシフトに穴が開いたので、48時間連続で働き続け、今までの自分の殻を破れた気がしました」。

何よりも恐ろしいのはページを繰っても繰っても、一日たりとも日付が飛んでいないことだった。

「おい、何してるんだ」

非常口の扉が乱暴に閉められる音がして、痩せこけた男が入ってきた。マオが手にしている日誌を見て、血相を変える。

「マオちゃん、それは……」

「店長、これはあなたの『成長管理日誌』です」

「よ、読んだのか……いったい、どうして……」

店長は30歳にしてはシミだらけの手をぶるぶると震わせている。

「おかしいと思ってたんです。『ワイワイ』のあまりにもできすぎたホワイトな環境は」