「お世辞」は信じたほうがずっと幸せ。作家・西加奈子インタビュー

新作『まく子』に込めた思い
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失くしたものを取り戻したい

〈まくことが好きなのは、男だけだと思っていた。〉そんな象徴的な一文で始まる『まく子』は、『サラバ!』で直木賞を受賞した西加奈子さんの受賞後第一作。

ひなびた温泉街を舞台に、11歳の少年・慧が、不思議な転入生・コズエとの出会いを通じて、人を信じること、大人になっていくことを学んでいきます。

とにかく何かをまきちらすような小説を書きたかったんですよ。主人公を男の子にしたのは、まく=射精のイメージがあったから。

冒頭にも書いたとおり、砂場の砂まきだのビールかけだの、率先して「まいて」いるのはたいてい男だけど、女だって同じようにはしゃぎたいよなあと思ったところから、女子なのにまく子=コズエとの出会いが生まれました。

「まく」には、感情がほとばしるようなイメージもあります。子供の頃、言いたいことがうまく言葉にならなくて、でも何か一言を口にしたとたん、止まらなくなってしゃべりまくること、ありませんでした?

大人になるにつれて妙に口達者になってしまい、感情を言葉にするというより、綺麗にまとめた言葉の理屈に感情を寄せてしまうことが増えてきた。その過程で失くしてしまった大事なものを取り戻したい、あの頃をもう一度やり直したいという気持ちでこの作品は書いていました。